2022 Fiscal Year Annual Research Report
治療効果を高める薬剤組み合わせを予測する情報技術の開発
Project/Area Number |
22J21984
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kyushu Institute of Technology |
Principal Investigator |
難波 里子 九州工業大学, 大学院情報工学府, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2025-03-31
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Keywords | 薬剤組み合わせ / 相乗効果 / 薬剤併用 / ドラッグリポジショニング / 治療標的分子 |
Outline of Annual Research Achievements |
疾患治療では単一の薬剤による治療が主流であるが、難治性の疾患に対する治療効果は限定的である。そのため、複数の薬剤の組み合わせによる相乗効果を活用した薬剤併用療法が注目されている。しかし、薬剤の組み合わせ数は膨大であり、実験的に全ての可能性を検証することは不可能である。本研究では、薬剤を細胞に添加した際の生体情報と疾患の生体状態の融合解析により、疾患の治療効果を高める薬剤組み合わせを予測する情報技術を開発する。 薬剤併用のメカニズムを理解するために、薬剤が相互作用する標的分子のデータ、およびその相互作用の結果を反映する個々の薬剤の薬物応答遺伝子発現データを用いて、2種類の薬剤ペアの特徴ベクトルを構築した。薬剤とその標的分子のデータは、1,489個の薬剤に関して公共データベース(ChEMBL、Drug Bank など)より収集した。個々の薬剤と標的分子の相互作用データから、薬剤ペアで制御される標的分子を考慮した1,107,816個の薬剤ペアの特徴ベクトルを構築した。薬物応答遺伝子発現データは、ヒト由来細胞に薬剤を暴露させた時の遺伝子発現データを公共データベース(LINCS)より収集し、1,107,816個の薬剤ペアの特徴ベクトルを構築した。 薬剤ペアの特徴ベクトルを用いて、シナジー効果を示す薬剤組み合わせの予測手法を開発した。疾患の治療標的分子(制御することで治療に繋がる生体分子)と薬剤ペアの標的分子の関係、疾患の遺伝子発現パターンと薬剤ペアの遺伝子発現パターンの関係を解析した。疾患の遺伝子発現データは公共データベース(TCGAなど)から収集し、治療標的分子は遺伝子発現データから予測した。ベイズ最適化を活用し、最適な薬剤の組み合わせを予測する手法のプロトタイプを開発し、その性能を数値的に検証した。その結果、先行研究の手法を大幅に上回る精度を達成することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
薬剤が相互作用する標的分子のデータ、およびその相互作用の結果を反映する個々の薬剤の薬物応答遺伝子発現データを用いて、2種類の薬剤ペアの特徴ベクトルを構築した。疾患の治療標的分子(制御することで治療に繋がる生体分子)と薬剤ペアの標的分子の関係、疾患の遺伝子発現パターンと薬剤ペアの遺伝子発現パターンの関係を基に、最適な薬剤の組み合わせの候補を予測する手法のプロトタイプを開発した。大腸がんや乳がんなど様々な疾患を対象に、その性能を数値的に検証した。その結果、先行研究の手法を大幅に上回る精度を達成することができた。 開発したプロトタイプを用いて、大腸がんなど様々な疾患に対し、新規の薬剤組み合わせを予測した。大腸癌に対して新規に予測された薬剤組み合わせについて、臨床薬理学の専門家と連携し、予測手法の更なる改善を行ったところ、プロトタイプよりも大幅に精度の改善が得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
アップデートした手法を用いて、大腸がんの治療効果を高める薬剤組み合わせを予測する。臨床薬理学の専門家と連携し、新しく予測された薬剤組み合わせの実験検証をより進める。実験検証の結果や予測された薬剤組み合わせの生体情報を用いて、治療効果を高める薬剤組み合わせのメカニズムや遺伝子群の考察を行う。 大腸がん以外の疾患についても、新規に治療効果を高める薬剤組み合わせを予測しする。文献や疾患の生体情報、薬剤の生体情報を用いて、妥当性を評価する。
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