2021 Fiscal Year Annual Research Report
ハダカデバネズミ神経幹細胞におけるがん化抑制機構の解明
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21J20660
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
山村 祐紀 熊本大学, 医学教育部, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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Keywords | ハダカデバネズミ / Naked mole-rat / 神経幹細胞 / 脳腫瘍 |
Outline of Annual Research Achievements |
ハダカデバネズミ(デバ)は、他の代表的な齧歯類(ハツカネズミやハムスター)と同程度の大きさながら平均寿命が約30年という長寿命である。また脳の機能低下にも抵抗性を持つとされており、脳腫瘍の発生が全く認められていない。本研究では、デバの脳におけるがん抑制機構を明らかにするため、脳腫瘍の起源細胞となり得る神経幹細胞に恒常活性化型HRas(HRasV12)とSV40 LargeT抗原という2つのがん遺伝子をレンチウイルスによって導入し、形質転換耐性の有無を検証した。デバ神経幹細胞はこれらのがん遺伝子導入により培養下における細胞死の割合が低下し、細胞増殖が顕著に亢進した。がん遺伝子を導入したデバNSCが腫瘍形成能を持つかを検証するため、免疫不全マウスの脳線条体へ異種移植を行った。他のグループによる過去の研究では、デバ線維芽細胞に同様のがん遺伝子を導入しても形質転換せず、異種移植により腫瘍形成しないと報告されていた。しかしながらデバNSCを用いた移植実験では、移植後1ヶ月程度で移植個体が衰弱し腫瘍形成することが確認された。この結果から、デバは細胞自律的にがん抑制機構を持つのではなく、組織全体でがんへの抵抗性を示すのではないかと推測された。 そこでハダカデバネズミ個体内でがん遺伝子を導入する実験系の立ち上げを開始した。まずデバ新生仔の脳室下帯に遺伝子導入する手法を確立した。現在、この遺伝子導入系を用いてデバ新生児の脳室下帯にがん遺伝子の導入を行い、形質転換した細胞の挙動を組織学的な手法を用いて解析している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予測とは異なり、ハダカデバネズミ神経幹細胞はがん遺伝子の導入により、免疫不全マウスの脳線条体へ異種移植した際に腫瘍形成することが明らかになった。従って計画を変更しハダカデバネズミ個体内でがん遺伝子を導入する実験系の立ち上げを開始した。条件検討を重ねた結果、効率的にデバ新生仔の神経幹細胞ニッチである脳室下帯に遺伝子導入する手法を確立できた。現在、この実験系を用いてハダカデバネズミ個体内での形質転換した細胞の挙動解析を行っている。したがって当初の計画とは異なるがおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
ハダカデバネズミの脳室下帯でがん遺伝子を導入した細胞を出現させ、その挙動を免疫染色など組織学的な手法を用いて解析する。導入するがん遺伝子は、恒常活性化型HRas(HRasV12)とSV40 LargeT抗原の組み合わせだけでなく、脳腫瘍における遺伝子変異として代表的ながん遺伝子も追加して行う。
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Research Products
(2 results)