2023 Fiscal Year Research-status Report
生態地理学的アプローチを用いた熱帯果樹ドリアンの収量変動メカニズムの解明
Project/Area Number |
22KJ2559
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
江口 碧 東京都立大学, 都市環境科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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Keywords | 環境応答 / 降水量 / 収量変動 / 熱帯雨林 / 熱帯果樹 / フェノロジー / マレーシア |
Outline of Annual Research Achievements |
果物の王様と呼ばれている熱帯果樹ドリアンの収量には豊凶や地理的な差異がみられることが経験的に知られているが、そのメカニズムには不明な点が多い。本研究では、ドリアンの収量変動メカニズムに対して東南アジアの熱帯雨林において数年間隔で発生する乾燥と低温が関与しているという仮説を検討するため、以下の3項目を目的としている。(ⅰ)現地調査を通じてマレーシアのドリアン農園における月ごと、品種ごとの収量を明らかにする、(ⅱ)ドリアン収量の空間的・時間的な特徴を明らかにする、(ⅲ)収量変動に影響を与える乾燥・低温の強度、時期を特定し、ドリアンの収量変動を説明するモデルを構築する。1年目である2022年度は調査地を決定し現地調査を開始した。2年目である2023年度は目的(ⅰ)(ⅱ)に取り組んだ。(ⅰ)について、2023年1月から現在までドリアン110本について花芽分化から果実の成熟までの様子をデイリーベースで観察し、収量に直接関係する花芽・花・ 果実の相対値の推移を記録している。現在までに4回の開花イベント(2023年2月、4月、12月、2024年3月)と1回の収穫(2023年6月)が観察され、15日程度の乾燥ストレスが花芽誘導のトリガーとなっている可能性が示唆された。また、開花・結実の規模がイベントによって異なること、収穫につながらない開花がおこっていることが明らかになった。今後、イベントごとの規模の違いや、個体レベルでの結実密度の違いに着目し、低温・乾燥条件との関係について明らかにする。また(ⅱ)について、現地調査とは別にマレーシア農業省が公開している果樹統計データを用いた、半島マレーシアにおけるドリアン収量の時間・空間的な変動性と降水量が与える影響についての成果を投稿中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
デイリーベースの現地調査により4回の開花イベント、個体ごとの開花日や結実の規模、収穫量の記録を行った。その結果、花芽誘導のトリガーとなる乾燥条件が明らかとなり、この成果について論文を執筆中である。また、統計データを用いて半島マレーシアのドリアン収量の時間・空間的な変動性を明らかにした論文を投稿中である。
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Strategy for Future Research Activity |
現地調査を継続し、開花日、開花・結実の相対的な量、収量を記録する。収穫期による結実個体数の違いや、個体レベルでの結実密度の違いに着目し、低温・乾燥条件との関係について明らかにし、ドリアンの収量変動を説明するモデルを構築する。
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Causes of Carryover |
現地調査による滞在を短くしたほか、予定していた学会発表の旅費を使用しなかったためである。残金は今年度の現地調査の旅費、解析や論文執筆に使用するパソコン、書籍等の費用、学会参加の旅費等に使用する予定である。
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