2023 Fiscal Year Annual Research Report
星間分子雲における重水素体濃縮機構解明のための新しい量子化学計算手法の開発
Project/Area Number |
22KJ2564
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
桑畑 和明 横浜市立大学, 生命ナノシステム科学研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2024-03-31
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Keywords | 量子効果 / 水素原子 / 重水素濃縮 / 経路積分法 / 量子化学計算 / 星間分子雲 |
Outline of Annual Research Achievements |
星間分子雲は星の誕生領域であり、その組成・物理量を知ることは我々が住む太陽系を含めて星誕生の初期条件を見積もることができる。本研究では星間分子雲における分子生成において発現する特異な同位体効果である重水素濃縮のメカニズムを解明するために、水素と重水素を厳密に区別できる手法を用いて、氷表面におけるメタノール生成の解明に取り組んだ。 本年度では我々が開発した固体表面を高精度で計算可能なCombined Plane wave and Localized Basis-sets (CPLB)法を用いて、氷表面において一酸化炭素に対する水素または重水素原子の付加または引き抜き反応計算を実行した。このCPLB法を用いて化学反応に直接関係する領域は原子核の量子効果を考慮できる多成分分子軌道法と氷表面の領域にはVASPを組み合わせて実行した。 原子の付加反応において量子トンネル効果により原子の付加反応が促進されることを明らかにした。同様に原子引き抜き反応においても量子効果が原子引き抜きを促進することを明らかにした。そのため、水素付加体の分子の方が壊れやすく、重水素付加体の方が安定であるため、重水素体が残りやすいと考えられる。そのため、重水素を含む分子の割合が多くなったことを明らかにした。現在はこれらの成果をまとめて国際論文の準備中である。 また、本研究では経路積分分子動力学法を用いて高圧氷の相転移における量子効果を調べた。その結果、量子効果は氷における相転移を促進することを明らかにした。これらの研究も含めて本年度はJ. Chem. Phys.などの国際論文を計4報報告した。
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Research Products
(7 results)