2022 Fiscal Year Annual Research Report
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21J23036
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
永沼 美弥子 横浜市立大学, 生命医科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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Keywords | プロテインノックダウン / PROTAC / ユビキチン-プロテアソームシステム / エストロゲン受容体α / 転写因子 / デコイ核酸 |
Outline of Annual Research Achievements |
ユビキチンプロテアソームシステムを利用したタンパク質分解誘導剤(PROTAC : Proteolysis-Targeting Chimeras)は、がん等の治療が困難な疾病に対する革新的な創薬モダリティのひとつとして期待されている。一方で、最適なリガンドが存在しない転写因子などの一部のタンパク質に対しては既存のPROTACの適応が困難である。転写因子には、DNA結合領域が存在し、ヒト転写因子のうち約96%のDNA結合領域の配列が明らかとなっている。そこで本研究では、DNA結合領域に着目し、この領域に結合可能なデコイ核酸を標的タンパク質のリガンドに用いた核酸型PROTACによって、転写因子を分解誘導できると考えた。標的転写因子のモデルとして、核内受容体の一つであるエストロゲン受容体α(ERα)を選択し、ERαの分解を可能にするデコイ核酸型PROTACを創製することを目的とした。 2022年度は、前年度に引き続きERαを標的としたデコイ核酸型PROTACの開発を行った。本研究で見出したLCL-ER(dec)は、ERαの分解を可能にし、転写因子分解誘導剤としての有用性が期待できる一方で、デコイ核酸型PROTACには、①生体内での安定性の乏しさ②低い細胞膜透過性の2点について課題がある。そこで、安定性の向上を目指し、デコイ核酸の修飾を検討した。具体的には、DNA配列の末端をループで閉じたヘアピン構造修飾や、ホスホロチオエート化(PS化)を行うことによる分子の安定化を行った。修飾を行ったデコイ核酸型PROTACについて各種活性評価を行った結果、分子の安定性を高める修飾として、ヘアピン構造が有用であるという知見が得られた。以上より、2022年度は、研究計画通りデコイ核酸に対しての修飾を施した分子設計・合成を行い、物性と各種活性に与える影響を解析した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2022度は、安定性の向上を目指し、デコイ核酸の修飾を検討した。具体的には、前年度見出したデコイ核酸型PROTAC、LCL-ER(dec)に対してDNA配列の末端をループで閉じたヘアピン構造修飾や、ホスホロチオエート化(PS化)を行うことによる分子の安定化を検討した。具体的には、ER(dec)に対して、PS化したデコイ核酸および、末端にT4ループ構造を導入したデコイ核酸またこれらを組み合わせたPSヘアピン型デコイ核酸をそれぞれ設計・合成した。これら3つのデコイ核酸についてLCLと銅触媒を用いたクリック反応により連結させ、核酸型PROTACを合成した。各PROTACについてヌクレアーゼ(Exonuclease Ⅲ)に対する酵素分解耐性を評価した結果、PS化PROTACは酵素分解耐性が向上したことが明らかとなり、一方で、ヘアピン化は一部が分解していることが明らかとなった。また、PS化による細胞膜透過性への影響を評価するため、FACSを行った結果、PS化したPROTACは細胞膜透過性が向上した。さらに、ERα結合活性は競合的な蛍光偏光アッセイによって評価し、デコイ核酸単体と同等のERα結合活性を有することが明らかとなった。そこで、ERα分解誘導活性について、乳がん細胞株MCF-7細胞を用いたウェスタンブロッティングにより評価した。その結果、PS化は、ERα分解活性が100倍ほど向上したが、一部のタンパク質に対する非特異な分解活性を示した。一方、ヘアピン化PROTACはExonuclease Ⅲに対する酵素耐性を獲得しつつ長時間、ERα分解活性を維持した。デコイ核酸型PROTACの核酸修飾においてヘアピン化の有用性が示された。以上より、2022年度は、研究計画通り分子設計・合成を行い、各種活性を評価することで、LCL-ER(dec)の分子の安定性向上を達成した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究ではこれまでに、ERαの分解を可能にするデコイ核酸型PROTACであるLCL-ER(dec)の開発を行ってきた。LCL-ER(dec)は、ERαの分解を可能にし、転写因子分解誘導剤としての有用性が期待できる一方で、LCL-ER(dec)およびいくつか報告されているデコイ核酸型PROTACには、①生体内での安定性の乏しさ②低い細胞膜透過性の2点について課題がある。2022年度は、安定性の向上を目指し、デコイ核酸の修飾を検討した。本年度は、細胞膜透過性の向上を目指し、細胞膜透過性ペプチド(CPP)とのコンジュゲートPROTACの設計・合成を行い、細胞膜透過性評価を行う。細胞内導入を確認できた後、前年度と同様の方法でERα分解活性を含む各種活性を評価する。
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Research Products
(6 results)