2022 Fiscal Year Annual Research Report
肝星細胞脱活性化を誘発する細胞内シグナルを標的とする肝線維化治療に向けた基盤研究
Project/Area Number |
21J23302
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
大岡 央 静岡県立大学, 薬食生命科学総合学府, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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Keywords | 肝線維化 / 肝星細胞 / 細胞内シグナル伝達 / 低分子化合物 / 構造活性相関 |
Outline of Annual Research Achievements |
肝線維化とは肝臓内にコラーゲンが過剰に蓄積した状態であり、肝線維化が進行した肝臓では肝疾患が不可逆的に進行してしまうため、肝線維化の予防・治療法 の開発が強く望まれている。肝星細胞(HSC)は肝臓に存在する細胞の1つで、肝臓が傷害を受けると活性化し、コラーゲンの産生が顕著に増大するため、肝線維化の原因細胞であると考えられている。しかしながら、未だHSCを標的とした肝線維化治療薬は存在しない。本研究では、先行研究においてHSCの活性化抑制作用を有することが示された粘菌由来低分子化合物DIF-1を用いて、新規肝線維化治療薬開発の基盤的知見を得ることを目指している。本年度は、DIF-1構造類似体を用いた構造活性相関解析、および化合物データベースを用いたDIF-1標的タンパク質の推定を行った。 ヒト由来肝星細胞株LX-2細胞および計14種類のDIF-1構造類似体を用いた構造活性相関解析を行った。TGF-β1の処置によりLX-2細胞を活性化させ、その後DIF-1およびDIF-1構造類似体を処置した。HSC活性化マーカーであるI型コラーゲンα1の発現量を定量することで、各化合物のHSC脱活性化能を評価した。その結果、DIF-1と同程度のHSC脱活性化能を有する8種のDIF-1構造類似体(Active群)および脱活性化能が減弱する6種のDIF-1構造類似体(Inactive群)を同定した。この結果からDIF-1のファーマコフォアを同定した。また、化合物データベースChEMBLに収載されている約190万種の低分子化合物とDIF-1構造類似体の類似度を計算することでDIF-1およびActive群に類似し、かつInactive群に類似しない低分子化合物を同定した。これらの低分子化合物の標的タンパク質情報から複数のDIF-1標的タンパク質候補を推定した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
年次計画通り、複数のDIF-1構造類似体の作製およびin vitroにおけるHSC脱活性化作用の検討を完了した。DIF-1のビオチン化が難航したため、DIF-1結合タンパク質の同定には至っていないが、構造活性相関解析の結果および化合物データベースとDIF-1構造類似体の構造情報を用いてin silico解析を行い、複数のDIF-1標的タンパク質候補を推定した。以上のことより、概ね計画通りに進行していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は本年度に引き続き、DIF-1の標的タンパク質の同定を目指す。
既に実施しているマウス初代培養細胞を用いたDIF-1による活性型HSCの網羅的mRNA発現変動解析(mRNA-Seq)のデータとDIF-1の標的タンパク質候補のデータを組み合わせることでDIF-1の脱活性化機序に関わるタンパク質を推定する。HSC脱活性化作用へのDIF-1標的タンパク質候補の影響を検討することでDIF-1の作用機序を明らかにする。
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