2023 Fiscal Year Annual Research Report
肝星細胞脱活性化を誘発する細胞内シグナルを標的とする肝線維化治療に向けた基盤研究
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22KJ2582
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
大岡 央 静岡県立大学, 薬食生命科学総合学府, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2024-03-31
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Keywords | 肝線維化 / 肝星細胞 / 構造活性相関 / 低分子化合物 |
Outline of Annual Research Achievements |
肝線維化が進展すると、肝機能の著しい低下だけでなく肝がん発症のリスクも増大するため、肝線維化の予防・治療法の開発が強く望まれている。肝星細胞(HSC)は、肝臓が傷害を受けると、コラーゲン産生能が高い活性型HSCに形質転換する為、肝線維化の責任細胞であると考えられている。本研究では、先行研究においてHSC活性化抑制作用を示した低分子化合物DIF-1を用いて、肝線維化治療薬開発の基盤的知見を得ることを目指している。本年度は、DIF-1標的タンパク質の推定、及び阻害薬によるDIF-1のHSC脱活性化作用の機序解析を行った。 前者ではアビジン-ビオチンシステムとプロテオーム解析を実施した。前年度のin silico解析で見出されたDIF-1標的タンパク質と比較した結果、最終的にGSK3β、Catechol-O-methyltransferase(COMT)、SMAD3、KDM4が共通するタンパク質として得られた。また、以前に得ていたRNA-seqデータを再解析した結果、DIF-1によってタンパク質リン酸化や神経組織形成に関するGO termが濃縮されたため、本研究ではSMAD3およびCOMTをDIF-1標的タンパク質候補とした。DIF-1はSMAD2/3のリン酸化レベルに影響せず、DIF-1のHSC脱活性化作用にSMAD2/3は関与しないことが示唆された。また、DIF-1とCOMT阻害薬を共処置によりDIF-1の脱活性化作用は解除され、DIF-1のHSC脱活性化作用にカテコールアミン類を介したシグナルの抑制が関与する可能性が示された。 本研究により、DIF-1はHSC活性化抑制及びHSC脱活性化の両方の作用を有し、異なる機序でHSCを静止型に誘導する低分子化合物であることが示された。また、モデルマウスでも線維化を寛解させたことから、肝線維化治療薬の有望なリード化合物であると考えられる。
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