2022 Fiscal Year Annual Research Report
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22J15810
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
小林 史尚 静岡県立大学, 薬食生命科学総合学府, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2024-03-31
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Keywords | 光反応 / チオウレア / 有機分子触媒 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年光触媒反応が注目され、特に遷移金属錯体を光触媒として用いた反応は多く研究されてきた。しかしこれらの触媒は高価であるだけでなく、すでに構造が充分に複雑であり、電子移動以外の新たな機能を付与させることはむずかしいのが実情である。本研究では多機能な有機分子光触媒を新たに創製し、基質との相互作用を円滑に起こすことで、独自の分子変換を実現することを目的とした。所属研究室で見出されてきたチオカルボニル化合物の知見から、チオウレアを母骨格とする新規光触媒の開発を推進することとした。チオウレアのブレンステッド酸性を利用することで対象の基質を活性化し、円滑な還元反応を起こすことを期待している。 2022年度は触媒構造の確立を目標に研究に着手した。単純なチオウレアでは紫外光領域にのみ吸収帯を持っており、取り扱いやすい可視光を用いることができなかった。また、触媒活性の向上には光励起寿命の延長などの工夫が必要とされることがわかってきた。これらの課題に対し、種々の置換基をチオウレア触媒に導入し、N-ヒドロキシフタルイミドエステルを用いたGiese型反応をモデル反応として、その触媒活性を評価した。その結果、これまでに可視光を用いることができる触媒も見出すことができた。 まだ触媒の機能に改善の余地を残しているものの、触媒構造の基本方針を確立でき、モデル反応における幅広い基質一般性の確保と次のステップへ進むための基礎的な検討を完了した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2022年度は触媒構造を確立することと、モデル反応を確立することを目標に研究計画を立てていた。これについて、可視光照射下で機能できるようにチオウレア触媒を修飾することは実現できたものの、期待通りの触媒活性を得るに至らず、まだ機能改善の必要性が残ってしまっている点は計画より遅れてしまっていると言える。ただこの点についても、解決策として重原子効果の利用という方針が建っており、またその効果についてもある程度実証済みである。残る課題は合成ルートの確立であり遅れはあるものの充分に取り返すことが可能だと考えている。その一方でこの触媒を用いた3成分型のGiese反応をモデル反応として確立しており、本反応は合成化学的な知見からも有用であると考えているためこちらに関しては経過に問題ないと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
触媒の励起種の長寿命化に注力することで、反応における基質一般性の拡大に注力する。現在アルキルラジカルを捕捉するオレフィンの構造が限定的であることが課題として挙げられており、この解決を図るために触媒の光触媒としての機能をより改善する必要がある。これまでの検討で光触媒の吸収波長帯を長波長化は実現されており、次なる施策として励起寿命を長波長化する。具体的には重原子の導入による長寿命化を画策しているが、目的の分子を合成することが難しく、種々合成方法の検討を行っていく予定である。 また想定とは異なり、モデル反応はオレフィンにアルキルラジカルが付加するにとどまらず、さらに3成分目として酸素官能基が導入されることを確認した。この酸素官能基の導入経路や光触媒と基質の電子のやり取りの経路といった反応機構を明らかにすることは必要不可欠であり、分光学的な解析及び種々の3成分目を検討することによってこの課題に取り組んでいく。
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