2022 Fiscal Year Annual Research Report
匂い物質結合タンパク質を用いたヒト嗅覚受容体マッピング法の開発
Project/Area Number |
22J23865
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
尾城 一恵 静岡県立大学, 薬食生命科学総合学府, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2025-03-31
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Keywords | TAR-Tatシステム / olfactory receptor / OBPⅡa / 特願2023-039400 / FACS / 転写量 / 膜表面発現量 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒトは嗅上皮に存在する約400種類の嗅覚受容体(hOR)の応答パターンによって様々な匂いを識別する。従って、匂い物質固有の応答パターンを解析できれば食品のおいしさに重要な“匂い”を科学的根拠に基づいて評価・設計することが可能である。匂い物質に応答する hOR は明らかとされつつあるものの、hOR 応答パターンを匂いの“質”と紐付ける試みは未だ成功していない。その原因として、ヒトの嗅覚知覚と同等の感度を持つhOR応答評価系が存在しないことが考えられる。 令和4年度は主に、①hOR応答評価系の感度向上と②匂い物質をhORに受け渡す役割を担う匂い物質結合タンパク質(OBPⅡa)の発現および精製に取り組んだ。 ①については、hORの転写量を上げることで系の感度向上に成功した。目的遺伝子の転写効率を上げる「TAR-Tatシステム」を搭載したベクターにhOR遺伝子をクローニングし、膜表面発現量をFACSで解析したところ、TAR-Tatシステムを搭載した方がhORの膜表面発現量が多かった。さらに、TAR-Tatシステムを搭載した系では搭載なしと比較して(+)-Carvoneに対するOR1A1の最大応答値が増加し、さらに応答閾値が下がった。以上のことから、TAR-Tatシステムを用いたhORの転写量増加がhOR応答評価系の感度向上に効果的であることが示された(特願2023-039400)。 ②のOBPⅡa精製には、酵母の発現系を用いた。発現量を増大させるため、9種類のシグナル配列の検討、培養温度、培養時間、培養容器を最適化した。その結果、条件検討前と比較して発現量が150倍に増加させることに成功した。 来年度は、さらなるhOR応答評価系の感度向上とOBPⅡaの単離および機能解析を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和4年度ではヒト嗅覚受容体(hOR)の膜表面発現量を100倍増加させ、応答感度の向上に成功し、特許も出願できた(特願2023-039400)。匂い物質結合タンパク質(OBPⅡa)については当初発現量が低かったものの、条件検討により150倍増加させることに成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
匂い物質結合タンパク質(OBPⅡa)は、匂い物質をヒト嗅覚受容体(hOR)に運ぶ働きがあると考えられている。しかし、その詳細は不明である。今後は、OBPⅡaと匂い物質の結合特異性を調べるとともに、OBPⅡaとhORの相互関係についても解析する予定である。
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