2021 Fiscal Year Annual Research Report
制約条件付きベクトル場に対する種々の最良型関数不等式
Project/Area Number |
21J00172
|
Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
濱本 直樹 大阪府立大学, 理学系研究科, 特別研究員(PD)
|
Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2024-03-31
|
Keywords | 不確定性不等式 / 最良定数 / ソレノイダル条件 / Laguerre陪多項式 / poloidal-toroidal分解 / 超幾何関数 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年2021年度に提出した当初の研究計画案に沿って、当該年度はHeisenbergの不確定性不等式の最良定数がソレノイダル条件のもとでどのような値になるのか、とくに制約条件が無い場合とは最良定数の値が異なるのかどうかについて重点的に調べた。このソレノイダル条件付き不確定性不等式は、量子力学の不確定性原理と流体力学の非圧縮性という一見かけ離れた2つの物理学的概念が数学的には整合していることを示唆しているという点で魅力的であり、数学雑誌(Integral Equations and Operator Theory)のある未解決問題集の中で紹介されていることからも、関数不等式論に携わる複数の数学者の関心を惹きつけてきた重要問題である。一般に、関数不等式の最良定数は計算それ自体が困難である場合が多く、この不等式についても、定数の最良値を見つける作業は暗中模索の手探りで難航していたが、ソレノイダル場の適当なポテンシャル表示によって問題を1次元最小化問題に帰着させ、さらにLaguerre陪多項式系に沿った未知関数の直交展開によって問題を数値計算に帰着させることで、最良定数の明示的な値を得ることに成功した。そうして、最良定数の値は元の値とは異なることが判明し、問題解決を見ることが出来た。結果内容の論文は現在投稿中であるが、プレプリント(arXiv)では公開されており、日本数学会をはじめ各研究集会でも講演発表の機会を頂いた。コロナウイルス感染拡大の影響により発表形式はオンラインが殆どであったが、次年度は対面形式での発表も実現していきたい。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度に実施した不確定性不等式の最良定数に関する研究は、当初は計算の手がかりがなかなか掴めず、とくにソレノイダル条件下での最良定数の計算は困難を極めるものになると予想していたため、問題解決には3年以上の年月を要する見込みであった。ところが、最近のプレプリントarXivで、渦なし場に対する不確定性不等式の最良定数の計算がヨーロッパのある数学研究チームによってなされたことを知った。本研究では渦なし場に対する最良定数の計算も行う予定であったが、既に先を越されて解決済みになっていたことが判明したため、残りの未解決問題であったソレノイダル場に対する最良定数の計算を本研究で進めることになった。同プレプリントで述べられていた方法をヒントにして問題を1次化させることができたことによって、最終的には計算結果を出すことが出来た。計算結果の論文は現在査読中であり客観的な評価は未だ得られていないが、研究者自身の主観では、上記の理由によって当該年度の研究内容としてはかなり進展したように感じている。
|
Strategy for Future Research Activity |
前年度に引き続き、Hardy型に類する関数不等式について、制約条件付きベクトル場に対する最良構造を調べていく。本年度は、Hardy不等式と同値でありながら形が異なる不等式についても研究対象に取り入れていきたい。とくに同値変形が渦度もしくは発散度を保存しないような場合には、制約条件によって最良定数のずれが発生することが見込まれるため、新しい視点が得られる可能性を期待することができる。他にも研究進展のヒントを得るために、前年度では実現が少なかった対面形式での研究集会での発表を積極的に執り行っていく予定である。
|