2022 Fiscal Year Annual Research Report
医薬品の迅速自在合成を可能にするグリーン酸化/連続多成分反応の革新的プロセス創生
Project/Area Number |
22J14638
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Osaka Metropolitan University |
Principal Investigator |
山本 結生 大阪公立大学, 大学院工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2024-03-31
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Keywords | 環境調和性 / 酸化反応 / 医薬品合成 / One-pot反応 / 高耐久性リサイクル触媒 / 金属複合レドックス系 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、これまでに研究を進めてきた金触媒を鍵触媒とした金属複合レドックス触媒系によるアミン酸化に関して、系中で形成した不安定イミンを合成中間体とする医薬品分子の迅速自在合成に取り組んだ。本触媒系によるアミン酸化を医薬基盤分子のone-pot合成へと応用するためには、アミンのイミンへの触媒的変換がクリーン、迅速かつ穏和な条件で実現可能であることが重要である。そこで、まず詳細な機構解明や反応条件の最適化を実施した。その結果、空気下や溶媒非存在下でも効率よく反応が進行することを新たに見出し、研究計画を立案した当初よりもはるかに効率的な触媒系の確立に成功した。また、基質適用範囲を第一級アミンのみならず第二級アミンにも拡大可能となり、さらに、ベンジルアミンと脂肪族アミンを用いて反応させることで非対称イミンを高選択的に形成可能であることを明らかとした。以上の成果は、医薬基盤分子合成に向けた鍵中間体である多様なイミンを本触媒系によって迅速に提供可能であることを強く支持するものである。加えて、触媒のリサイクル利用についても詳細に検討し、優れたリサイクル触媒として機能することを見出すとともに、8千回を上回るターンオーバー数を達成した。 続いて、上記で確立に成功した触媒的アミン酸化法を含窒素ヘテロ環類や医薬シード化合物のone-pot合成に展開した。その結果、医薬中間体であるベンゾチアゾール誘導体や抗がん剤・抗生物質創生の中核であるβ-ラクタム類を高収率で得ることに成功した。また、本手法を組み込んだ酸化的Ugi反応により、対応するジペプチド類が中程度の収率で得られたことからも、本触媒系の医薬基盤分子合成への有用性が十分に確立できたと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度は金銅二元系触媒によるアミン酸化法について、各触媒の役割や触媒耐久性・反応性に関する知見を大きく深めることができた。その結果、空気を酸化剤とする場合や溶媒を使わない場合でも良好に反応が進行するという、極めて優れた環境調和性と実用性を兼ね備えた触媒系へと本手法を昇華させることにつながった。また、医薬シード化合物の核となる含窒素ヘテロ環類やジペプチド類のone-pot合成へと本手法を展開することで、これまでに合成不可能であった多彩な置換基・修飾骨格を有する医薬品シード化合物を簡便かつ自由自在に調製可能となった。このように、研究計画を立案した当初よりもはるかに効率的かつ汎用的な手法の確立に成功しており、さらに酸化反応とヘテロ元素の反応性を巧みに組み込んだ機能性π共役系の直截的構築にも成功した。また、次年度に実施を計画していた先駆的診断薬・治療薬創造を目指した革新的高性能蛍光色素分子の環境調和型合成に関しても予備検討を開始した。本年度、本研究成果は国際学術誌の学術論文誌に6報掲載され、中でもOrg. Biomol. Chem.誌に掲載された本研究の内容を含んだアミンのグリーン酸化法に関する総説論文については本誌のInside front coverに選出された。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度までの研究成果を踏まえ、次年度は金銅二元系触媒によるアミン酸化法を応用し、系中で形成した不安定イミンに対して、アニリン誘導体をヨウ素共存下で作用させることで、多様なヘテロ元素を架橋させた希少な高機能蛍光色素分子を短工程かつ高収率で合成可能な新規手法を開拓する。含ヘテロ元素型蛍光色素は、架橋元素や修飾骨格・置換基によって光学特性が著しく変化するため、それらを自在に導入可能な合成法の開発は診断薬開発において重要な要素の一つである。しかし、従来法の多くは空気不安定な試薬や重金属試薬を必要とする多段階・量論反応かつ目的物の収率が10%前後にとどまる基質適用範囲が限定された合成法であったため、新規診断薬の探索に必要な誘導体合成と物性評価に多大な労力を強いられてきた。そこで次年度は、金銅二元系触媒系による酸化変換を応用した短工程・高効率変換により架橋元素・置換基・修飾骨格を自在に組み替え可能な触媒的グリーン酸化プロセスの開発に取り組むことで、多様な誘導体を簡便に調製し医療現場へ迅速に提供可能で実用的な合成法を確立する。本研究を通じて、機能性発現に有効なヘテロ元素の精密・複合導入を、酸化反応を軸に一挙に達成可能とすることで、画期的な機能性診断薬・治療薬の創出を目指す。また、得られた機能性蛍光色素の材料特性についても各種測定から検討を行い、本触媒系により合成した蛍光分子を有機触媒として用いた光触媒反応の開発についても並行して進める。
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