2023 Fiscal Year Research-status Report
6π電子系結晶高速フォトクロミック分子の基盤構築と応用開拓
Project/Area Number |
22KJ2624
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | Osaka Metropolitan University |
Principal Investigator |
濱谷 将太 大阪公立大学, 大学院工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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Keywords | フォトクロミズム / ジアリールベンゼン / ジアリールエテン / 量子化学計算 / 熱戻り反応 / Woodward Hoffmann則 / 6π電子環状反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、6π電子系結晶高速T型フォトクロミック分子の基盤構築と応用開拓を目指している。特に、6π電子系フォトクロミック分子であるジアリールエテンおよびジアリールベンゼンに着目して研究を進めている。 令和4年度には、ジアリールベンゼン誘導体の熱戻り反応性を見積もることに着手し、量子化学計算によって見積もった活性化エネルギーと熱戻り反応の速度定数が相関関係になり、熱戻り反応の半減期を定量的に見積もることができた。 令和5年度には、新たな反応メカニズムで機能する高速T型フォトクロミック分子の創出に注力した。従来、着色体が熱的に安定であるP型フォトクロミック分子として知られるジアリールエテンの反応点炭素を窒素原子に置き換えたアザジアリールエテンが新たな高速T型フォトクロミック分子として機能することを見出した。この熱戻り反応性は、ペリ環状反応の反応性を理論的に説明するWoodward-Hoffmann則に基づくと考えられる。量子化学計算によって、従来のジアリールエテンの熱戻り反応はWoodward-Hoffmann則において禁制である同旋的経路に基づいて進行するのに対して、アザジアリールエテンの熱戻り反応は許容である逆旋的経路に基づいて進行することがわかった。このように、これまでにない反応メカニズムで機能する高速T型フォトクロミック分子の創出に成功した。さらに、従来、光のみでしか生成できなかった着色体を熱的に生成する分子の合成にも成功している。逆フォトクロミズムの創出を念頭に、特性評価を行っているところである。 ジアリールベンゼンの熱戻り反応における溶媒依存性を検討した。興味深いことに、メトキシ基を有する誘導体の場合のみ、プロトン性溶媒中において熱戻り反応が加速することがわかった。さらに、酸を添加することで、熱戻り反応は劇的に加速することを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究では、6π電子系結晶高速T型フォトクロミック分子の基盤構築と応用開拓を目指している。特に、6π電子系フォトクロミック分子であるジアリールエテンおよびジアリールベンゼンに着目して研究を進めている。令和4年度には、ジアリールベンゼンの熱戻り反応性を量子化学計算によって定量的に見積もることができることを見出した。この溶液中の熱戻り反応性の正確な予測は、本研究計画である結晶状態での熱戻り反応の制御に大きく繋がるため、重要な成果と考えている。令和5年度には、従来、着色体が熱的に安定であるP型フォトクロミック分子として知られるジアリールエテンの反応点炭素を窒素原子に置き換えたアザジアリールエテンが新たな高速T型フォトクロミック分子として機能することを見出した。この高速な熱戻り反応性は、ペリ環状反応の反応性を理論的に説明するWoodward-Hoffmann則に基づくと考えられる。量子化学計算によって、従来のジアリールエテンの熱戻り反応はWoodward-Hoffmann則において禁制である同旋的経路に基づいて進行するのに対して、アザジアリールエテンの熱戻り反応は許容である逆旋的経路に基づいて進行することがわかった。この成果は、新たな6π電子系高速T型フォトクロミック分子の創出という点において今後の研究を推進する重要な成果である。これらの成果を含む研究成果は、学術論文4報、学会発表8件と十分な成果を発表しており、おおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
令和6年度は最終年度にあたり、ジアリールベンゼン、およびアザジアリールエテンの更なる特性評価を行う。特に、結晶状態での評価を念頭に研究を進める。結晶状態でフォトクロミズムを示す種々のジアリールベンゼン誘導体の合成に成功している。X線構造解析、フォトクロミック反応挙動解析、量子化学計算を行うことで、結晶状態の熱戻り反応速度の制御を目指す。特に、結晶構造、結晶中の空隙、自由体積を考慮する。アザジアリールエテンは、従来のジアリールエテンと異なる反応経路に基づき高速な熱戻り反応を示すことがわかっている。現在、結晶状態でフォトクロミズムを示すアザジアリールエテンの創出に着手しているところである。X線構造解析、溶液中および結晶中のフォトクロミック反応挙動解析、量子化学計算を行うことで、結晶状態におけるフォトクロミック反応を詳細に検討する。また、従来、光のみでしか生成できなかった着色体を熱的に生成するアザジアリールエテン誘導体の合成にも成功している。これは、逆フォトクロミズムの創出に繋がる可能性があり、6π電子系逆フォトクロミック分子の創出を念頭に、特性評価を行う。
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Causes of Carryover |
学内単結晶X線構造解析装置使用費にあてていたが、現時点では利用回数が少なく、予定していた利用料より少なくなっている。使用計画としては、次年度の学内単結晶X線構造解析装置使用費にあてる予定である。
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