2023 Fiscal Year Research-status Report
バイタルセンシングを志向したニューロモルフィック電子強誘電体ゲートFETの開発
Project/Area Number |
22KJ2626
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | Osaka Metropolitan University |
Principal Investigator |
嶋本 健人 大阪公立大学, 大学院工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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Keywords | 電子強誘電体 / マルチフェロイック / パルスレーザー堆積法 |
Outline of Annual Research Achievements |
超高感度THz電磁波検出器の開発を目的とした電子強誘電体型ゲートFETの作成に向けて、パルスレーザー堆積法を用いた電子強誘電体YbFe2O4薄膜の作製に取り組んだ。本物質は強還元雰囲気下でのみ相形成するため、単相の単結晶試料においても、Fe イオンの脱離による~10%程度の Fe 欠損が生じることが問題となっている。強誘電性の TC は 330Kだが Fe 欠損を抑制した単結晶では 390K 程度まで上昇することが報告されており、室温での安定した強誘電性発現には化学量論組成の結晶を作製することが非常に重要である。 そこで今年度は、Yb : Fe=1 : 2 となるYbFe2O4 ターゲットを用いた単元パルスレーザー堆積(PLD)法に加え、結晶相や仕込み組成の異なる 6 つの原料ターゲットを用いて、原料供給を自由に設計できる多元PLD 装置を新たに開発した。強還元雰囲気下のみで形成する YbFe2O4 の結晶成長に向けて、より精密に気相状態を制御するため、 QMSを用いた~10-9 Torr オーダーの O2, H2O、および OES を用いたターゲットからアブレーションされたプラズマプルームの発光スペクトルの in-situ 測定を適用した。 原子状活性種の定量的な評価を基にレーザー条件を制御することで、発光スペクトルと YbFe2O4 相の結晶成長との相関関係を見出し、単相エピタキシャル薄膜を再現性良く作成する手法を確立した。多元PLD 法では、理論設計組成比を化学量論組成であるYb:Fe=1:2とした製膜に取り組み、薄膜組成比Fe/Yb=~1.8程度のYbFe2O4単相エピタキシャル薄膜を作製することに成功している。本成果は、Fe欠損を抑制しながら、超還元雰囲気を必要とするYbFe2O4薄膜の相形成および組成制御の並立を可能にするきわめて重要な研究成果であると考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
超高感度THz電磁波検出器の開発を目的とした電子強誘電体型ゲートFETの作成に向けて、パルスレーザー堆積法を用いた電子強誘電体YbFe2O4薄膜の作製に取り組んだ。Fe欠損を抑制しながら、超還元雰囲気を必要とするYbFe2O4薄膜の相形成および組成制御の両立させるための指導原理を構築し、これまでの研究成果をまとめ上げ、現在2報の論文を執筆中である。また、それらの得られた「薄膜の成長機構」を実証するために、6元ターゲット駆動型PLD装置を自作し、設計組成比を化学量論組成よりもFe 過剰とした製膜を可能にできることも明らかにした。これまでの成果を基に、本研究期間中に下部電極上への化学両論組成YbFe2O4薄膜の単相エピタキシャル薄膜を得ることが「世界で初めて」可能になり、薄膜全体が電荷秩序化している形での様々な物性評価が可能になると考えられ、大きな進展が期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、これまでの成果を基に、本研究期間中に下部電極上へのYbFe2O4薄膜の単相エピタキシャル成長を目指す。格子ミスフィットの観点から(111)Ptや 、金属および半導体としても適用可能である (111)In2O3を下部電極材料として検討する。また、良質なエピタキシャル界面を得るため、電極薄膜の表面平坦性やキャリア密度、移動度を評価する。さらに、電子線リソグラフィを用いて上部微細電極構造を形成し、MFM、MFS構造を作製する。 まず、金属/電子強誘電体/金属(MFM)構造のデバイスを用いて、電子強誘電体YbFe2O4薄膜試料に電磁波を照射した際の光学キャリア生成、キャリア分離(シフト電流)などの光誘起現象を検討する。照射光のエネルギー、パルス幅、パルス高さを制御し、光学キャリア生成による高速応答ダイナミクスを観測することを目標とする。そして、外部パルス電場を印加しながら電流を測定し、印加電圧の変化に対応した電子強誘電体YbFe2O4薄膜の分極変化の挙動を世界に先駆けて直接的に観測することを目指す。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた主な理由は、2023年度内に想定していた研究留学の延期に伴い、旅費の使用額が想定を大きく下回ったためである。次年度において、この研究留学の実施を検討している。
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