2022 Fiscal Year Annual Research Report
双対共変な新しい超重力理論によるド・ジッター宇宙の網羅的探索と沼地問題
Project/Area Number |
22J14419
|
Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kitasato University |
Research Fellow |
森 遥 北里大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2024-03-31
|
Keywords | Double Field Theory / 超弦理論 / 双対性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、U双対性やT双対性に注目することで(準)安定なド・ジッター(de Sitter, dS)真空解を網羅的に構築し、沼地予想に寄与することで現実的な宇宙・素粒子モデルの可能性を広げることである。 本年度前半では、超弦理論に由来する双対性であるT双対性やU双対性に注目し、(gauged) supergravityが、U双対性共変な理論であるExceptional Field Thoery (EFT)にどのように埋め込まれているかを調べた。EFT理論の特徴は、U双対性群E_{d(d)}の構造によって時空の次元が拡張されることである。当初は、この拡張された座標系の上でゲージ化された対称性、特にド・ジッター解との関連が指摘されているトロンボーン対称性が明示されることを期待していた。ところが、実際には直接E_{d(d)}群からトロンボーン対称性を取り出すのは技術的に難しく、実際には座標系の拡張とは結び付かないことがわかった。 そこで、年度の後半では方針の転換を行い、E_{d(d)}群の代わりに、もう少し構造が明瞭なO(d,d+n)群を使って、heterotic supergravityや、これに関連するT双対性共変な理論である Gauged Double Field Theory (GDFT)について調査した。そして、GDFTとheterotic supergravityを結びつける一般的な整合性条件を明らかにした。また、双対性共変な理論の拡張された座標系の元で共変微分を再構成することで、ヘテロティック超重力理論のゲージ変換が正しく再現されることを確かめた。今後は、この結果に基づき、GDFTの理論構造をさらに精査することで、網羅的な解の構築を目指す。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、T双対性やU双対性に注目することで、(準)安定なド・ジッター(de Sitter, dS)真空解を網羅的に構築することを目的としている。 今年度前半では、U双対性共変な理論であるEFTを用いて、ド・ジッター解との関連が指摘されているトロンボーン対称性が明示されるような解が構成されるかどうかを調べた。例えば、ゲージ群の構造定数に着目し、適宜数値計算も利用するなどの様々な方法を試したが、その上で、この方針で進めていくことは技術的に困難であることがわかった。 そこで、年度の後半では、特にheterotic supergravityに注目することとした。Heterotic supergravityと関連する、T双対性共変な理論としてGDFTが知られている。GDFT自体の理論構造、特にゲージ代数の構造に注目することで、GDFTから構成される解の構造、特にド・ジッター解を得るための条件を探ることにした。これは、申請当初から研究の方針のひとつとして考えていたものである。その第一歩として、まずはGDFTとheterotic supergravityを結びつける一般的な整合性条件を明示できた。この結果は、GDFTの理論構造を明らかにする上での足掛かりとなる。したがって、方針の転換こそあったものの、研究自体はおおむね予定通り進行していると考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
真空解を網羅的に探るためには、まずはGDFTの理論構造をさらに明らかにする必要がある。その際の手がかりとなるのが、type II supergravityと関連するT双対性共変な理論であるDouble Field Theory(DFT)である。DFTはO(D,D)対称性を持つことが知られており、そのゲージ対称性は亜代数と呼ばれる、Lie代数とは異なる性質を持った代数構造で支配されることが知られている。また、DFTのゲージ代数構造は、内部にDrinfel'd doubleと呼ばれる直和構造を持っており、これがtype II supergravityとDFTの間の整合性条件の代数的な起源となっている。一方で、GDFTは、O(D,D+n)対称性を持つことが知られている。ここから類推すると、今年度の研究で扱ったGDFTのゲージ代数や整合性条件に関連して、GDFTのゲージ代数もDrinfel'd doubleのような、何らかの直和構造を持っていると考えられる。まずは、この内部構造を明らかにすることが次の目標となる。仮に、このGDFT版の直和構造が見えたとすると、この構造を使ってheterotic版Poisson-Lie T-dualityを考えることができる。Poisson-Lie T-dualityは、群多様体上でDrinfel'd doubleを考えることで実行可能な(真空)解の構成方法(solution generating technique)である。
|