2023 Fiscal Year Annual Research Report
哺乳動物で獲得されたアラーモンによる新たなストレス応答制御機構の解明
Project/Area Number |
22KJ2661
|
Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
伊藤 道俊 慶應義塾大学, 環境情報学部, 特別研究員(PD)
|
Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2024-03-31
|
Keywords | 緊縮応答 / ppGpp / MESH1 / シグナル伝達 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、イオンクロマトグラフィー-質量分析法(IC-MS)を用いた動物細胞のppGpp定量系を開発し、動物の(p)ppGpp定量を行う上での課題であった、イオンペア試薬を用いない高感度(p)ppGpp定量の開発に成功した。この実験系を用いて、HeLa細胞の(p)ppGpp定量を行ったところ、ppGpp標準品とは異なるリテンションタイム(RT)を持つppGpp様シグナルが検出された。ヒトppGpp分解酵素MESH1欠損HeLa細胞、大腸菌のppGpp合成酵素RelA過剰発現HeLa細胞を作成してppGpp定量を行った。その結果、RelA過剰発現体からはppGpp標準品と同様のシグナルが得られたが、MESH1欠損体からは野生型と同様、ppGpp標準品とはRTが異なるシグナルが検出された。これらと、MSスペクトルの結果から、ヒト細胞から検出されるppGpp様シグナルはppGppのアナログであることが示唆された。 また、研究開始当初はppGppと結合するヒトタンパク質は一切確認されていなかったが、ヒトGTPセンサータンパク質であるPI5P4KβのGTP結合部位にppGppが結合することを明らかにした。この結果を受けて、ppGpp-conjugated beadsの作成を行い、ヒトのppGpp結合タンパク質の網羅的な解析を行う基盤づくりを行った。さらに、動物におけるppGpp合成酵素探索のため、ppGpp合成分解能を持たない大腸菌変異株を作成し、変異株に対してヒトの脳cDNAライブラリーを導入した。選択培地でスクリーニングを行ったところ、いくつかのコロニーが得られた。 これらの研究により、動物における(p)ppGppの生理的な役割を同定するまでは至らなかったが、今後のppGpp研究を進めていくうえで重要な基盤づくりを行う事ができた。
|