2021 Fiscal Year Annual Research Report
多能性幹細胞のアミノ酸代謝機構に基づく心筋分化制御法の確立
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21J21186
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
梅井 智彦 慶應義塾大学, 医学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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Keywords | 代謝制御 / 細胞分化 / ヒト多能性幹細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は代謝制御によりヒトiPS細胞から心筋細胞への分化誘導法を安定化させることである。採用初年度である令和3年度はまず心筋分化誘導過程の代謝変動を分析し、最適な培養環境を同定することを目標とした。 まず代謝変動を評価するため、ヒトiPS細胞から心筋分化誘導過程に生じる細胞(中胚葉細胞・心臓中胚葉・心筋前駆細胞・分化心筋細胞)を回収し、網羅的トランスクリプトーム解析を行った。心筋分化誘導効率の高い群(分化指向性の高い群)と低い群(分化指向性の低い群)における変動遺伝子を抽出して遺伝子オントロジー解析を行ったところ、誘導効率の高い群では心筋関連の遺伝子群が抽出され、一方で誘導効率の低い群では中胚葉由来の非心筋細胞関連の遺伝子群が抽出された。また、階層的クラスタリング解析を行ったところ、心臓中胚葉細胞以降の細胞において誘導効率の高い群と低い群はそれぞれ異なるクラスターに分類された。これらの結果は中胚葉由来臓器の発生学的な知見と一致しており、分化初期の調整が重要と考えられた。 トランスクリプトーム解析の結果から特定のアミノ酸関連代謝酵素の発現が大きく変動することが見出されたため、実際に代謝調節薬を用いて心筋分化誘導を行ったところ心筋分化誘導効率が改善した。これは複数のヒトES/iPS細胞でも同様の結果であり、分化初期の代謝制御によって心筋細胞への分化転換を起こしていることが示唆された。 上述のように令和3年度は心筋細胞誘導過程の代謝変動を解析し、代謝調節によって心筋細胞への分化指向性を高める培養環境の同定に成功した。本研究結果は細胞分化の運命決定を代謝制御が担っている可能性を示唆しており、新たな知見を見出したと考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和3年度は心筋細胞誘導過程の代謝変動を解析し、代謝調節によって心筋細胞への分化指向性を高める培養環境の同定に成功した。本研究は細胞分化の運命決定を代謝制御が担っている可能性を示唆しており、新たな知見を見出したと考える。本年度の目標は達成できており、本研究は概ね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
ヒトiPS細胞から心筋細胞への分化誘導は心臓発生を模倣した分化誘導法であるが、中胚葉由来臓器の分化誘導法と似ているため、中胚葉由来の非心筋細胞が多く誘導されてしまうことが課題である。引き続きトランスクリプトーム解析を行い、心筋細胞への分化転換を起こす因子の同定を行い、また網羅的メタボローム解析や安定同位体を用いたトレーシング、代謝フラックス解析を追加し、細胞内代謝変動を確認しつつ、代謝制御と分化転換の関連について分子生物学的に明らかにする。上記を確認したのちに、代謝制御によって得られた心筋細胞の構造的評価や機能的評価を行う。
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Research Products
(1 results)