2021 Fiscal Year Annual Research Report
肺癌オルガノイドを用いた小細胞肺癌の分子進化過程・抗癌剤耐性化メカニズムの解明
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21J21306
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
福島 貴大 慶應義塾大学, 医学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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Keywords | 小細胞肺癌 / オルガノイド / 分子進化 |
Outline of Annual Research Achievements |
①小細胞肺癌(SCLC)オルガノイド 樹立:40人のSCLC患者について気管支鏡生検、喀痰、胸水、血液からSCLCオルガノイドを樹立し、2021年の世界肺癌学会で報告した。 ②オルガノイドの組織学的・分子学的相同性の確認:樹立したSCLCオルガノイドが臨床検体組織と相同しており、既報で報告されるSCLCに特徴的な遺伝子異常(TP53やRB1など)が存在していることを確認した。また、RNA解析によって主要転写因子発現に基づき4つのsubtypeに分類されることを確認した。これまでhomogeneousと考えられていたSCLCにおいてintertumoral heterogeneityがあることをオルガノイド においても実証し、clinical relevantなモデルであることを示した。これらの主要転写因子は、実際の臨床検体病理組織においてもsubtypeごとに高発現しており、実臨床におけるBiomarker候補となる可能性が考えられ、現在phenotypeの違いを評価中である。 ③ 同一患者における治療前後での分子進化の確認:上記40人のうち、9人の患者では抗癌剤治療前後での複数のタイムポイントでオルガノイド を樹立した。エトポシド を用いた薬剤感受性試験において、樹立したオルガノイド は臨床経過を反映していることを確認した。すなわちエトポシド 耐性後に樹立したオルガノイド では、耐性前と比較してIC50値が高く、耐性を獲得している傾向が見られた。今後これらのオルガノイド についてRNA解析および全ゲノム解析を実施し、治療によりどのような分子学的変化が起きているのかを検討する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度では、まず小細胞肺癌(SCLC)オルガノイドを多数樹立することを目標としていた。実際、40症例の患者からオルガノイド を樹立し、病理学的検討や分子学的検討(全エクソーム解析やRNA解析)にて臨床を反映したモデルであることを示せた。そうした点では、おおむね順調に進展していると考える。一部のSCLCにおける特徴的な生物学的特徴から治療標的となりうる分子経路を見出しており、現在マウスモデルや遺伝子編集技術において検討している。 一方で、同一患者における治療前後で起きている分子学的検討がまだ進んでいない。順次RNA解析および全ゲノム解析を実施し、抗癌剤治療によりどのような分子学的変化が起こるのか、個人間で同様の分子学的変化の傾向があるのかを検討したい。
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Strategy for Future Research Activity |
①小細胞肺癌(SCLC)オルガノイド 樹立の継続:現在までに40人のSCLC患者についてオルガノイド を樹立できているが、今後は特に同一患者における複数のタイムポイントでの樹立を行っていく。計10-15人のSCLC患者について、抗癌剤治療前後における複数のタイムポイントでの樹立を行うことを目標とする。そのためにCTCを用いたオルガノイド 樹立を活用する。 ②同一患者における治療前後での分子進化の確認:同一患者におけるオルガノイド について、抗癌剤治療における分子学的変化についてオミクス解析による検討を行う。まずはRNA解析および全ゲノム解析を予定しているが、薬剤耐性を克服する新規治療標的としてはエピゲノムにも着目する必要があると考えられるため、ATAC解析やメチル化解析も追加検討していく。生物統計家とも適宜相談して分子学的変化に関わる候補分子/経路を絞っていきたい。
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