2022 Fiscal Year Annual Research Report
変形を伴う塗膜における経年劣化のビジュアルシミュレーション
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21J21729
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
石飛 晶啓 慶應義塾大学, 理工学研究科(矢上), 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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Keywords | モデリング / ビジュアルシミュレーション / ウェザリング |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,塗装された金属物体の劣化表現を目的とし,劣化度に応じたウェザリングが施された仮想的なオブジェクトを配置するAR(拡張現実)システムの実現を目標とする.2年目にあたる2022年度は,ARシステムとして必要な要素を考慮しながら,ビジュアルシミュレーションの写実性,監督可能性の向上に取り組んだ.今年度の主要な実績は以下の3項目に要約できる. 1. 2021年度の実績である位置ベース運動力学(PBD)を用いた薄膜の湾曲表現を塗膜に適用した.劣化の状況に応じてPBDの適用範囲を動的に変更することで,亀裂の周辺から湾曲する過程を効率的にシミュレーションすることが可能になった.この成果については国内シンポジウムVisual Computing 2022にて発表し,VC論文賞 (2nd prize),CGVI優秀研究発表賞,CGVI学生発表賞の3件を受賞した. 2. 亀裂の発生条件について,破壊力学的な観点から改めて考察・修正した.これにより亀裂があまり目立たずにまだら模様だけが表れるような場合や,細かな塗膜片に分断されるような場合など,様々なパターンの塗膜剥離にも対応できるようになった. 3. シミュレーションアルゴリズムを並列化可能なものに改良し,大部分の処理をGPUで実行できることを確認した.これにより大幅な高速化が実現され,高精細なポリゴンメッシュモデルを対象としたシミュレーションにおいても対話的な操作が可能になった. 4. 破壊の逆現象が生じる条件と発生時の処理を定義することで,シミュレーションの逆行を可能にした.これにより,従来は一方的な劣化の進行を制御するにとどまっていた経年劣化シミュレーションの監督可能性が向上し,局所的に塗膜を復元することが可能になった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は薄膜上の破壊シミュレーションと湾曲表現を組み合わせることで,塗膜における経年劣化の写実的なシミュレーションを実現した.さらに,並列計算に対応したアルゴリズムを開発し,高精細なモデルを対象とした場合においてもリアルタイムなシミュレーションが実行できるようになった.これにより,高い写実性と描画速度が求められるARシステムに,本研究によるビジュアルシミュレーションを導入することができるようになった.
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Strategy for Future Research Activity |
本年度でCGコンテンツの生成はおおむね達成できたため,これをヘッドマウントディスプレイで表示してARシステムへの導入を試みる.これまでは一般的なマウス向けにシミュレーションのユーザインタフェース(UI)をデザインしていたが,本研究によるシミュレーションの監督可能性を十分に発揮できるよう,直感的でAR向けのUIを設計することが重要になる.そしてウェザリングによって,仮想オブジェクトと現実世界の見え方のギャップが軽減され,現実世界と親和性の高いCGコンテンツが提示できるか,ユーザテストを通じて調査する.
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Research Products
(1 results)