2022 Fiscal Year Annual Research Report
冷却リュードベリ原子を用いて解き明かす非平衡強相関系におけるクラスター形成
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21J22452
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
河村 泰良 慶應義塾大学, 理工学研究科(矢上), 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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Keywords | 非平衡量子多体系 / 冷却Fermi原子気体 / FFLO状態 / 対形成揺らぎ / 強結合理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
非平衡量子多体系における対形成現象を理解するために、2つの化学ポテンシャルの異なる熱浴との接続により非平衡状態に駆動される駆動散逸冷却Fermi原子気体のモデルを考えた。このモデルでは、粒子・エネルギーの流出入が釣り合った非平衡定常状態において、系のエネルギー分布が2つの熱浴のFermi準位を反映し、2段構造を持つ。前年度の研究で、この2段構造を持つ非平衡Fermi分布が実効的にFermi面を2つに分裂させること、またこのFermi面の「非平衡分裂」により、Cooper対がゼロでない重心運動量を持つFulde-Ferrell-Larkin-Ovchinnikov(FFLO)タイプの非一様超流動状態が実現しうることを、非平衡平均場理論の範囲で明らかにした。ただし、FFLOタイプの非一様超流動状態は、冷却原子気体のような空間的に等方的な系では、対形成 揺らぎに対し不安定であることが、熱平衡系と非平衡系の両方の場合で知られている。 そこで、今年度の研究では、熱平衡系と非平衡系の両方の場合で、平均場近似を超え対形成揺らぎの効果を取り込んだ強結合理論を用い、FFLOタイプの超流動状態を対形成揺らぎに対し安定化させる方法を理論的に検討した。光格子により系の連続回転対称性を明示的に破ることにより、この対称性に起因する無限縮退が解け、対形成揺らぎが抑制されることを明らかにした。また、この対形成揺らぎの抑制により、光格子中では熱平衡系と非平衡系、どちらの場合でもFFLOタイプの非一様超流動状態が安定化することを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では非平衡開放系における「強相関効果」と「非平衡効果」の融合が生み出す新奇物理現象の解明を目標としている。そのため、駆動散逸冷却Fermi原子気体において、非平衡効果により生じるFFLOタイプの非一様超流動状態が、強相関効果(対形成揺らぎ)により不安定化する現象を見出したことは、本研究において重要な成果であると言える。さらに、不安定化したFFLOタイプの非平衡超流動状態を安定化する具体的方法も提案することができた。以上のことから、研究はおおむね順調に進展していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度までは、駆動散逸量子多体系における非平衡定常状態を研究対象としてきた。今後は、これまでに開発した理論を拡張し、非平衡非定常状態にある駆動散逸量子多体系を調べていく。特に、駆動散逸量子多体系の制御パラメータをクエンチした際の系の時間発展を調べることで、これまでに見出したエキゾチックな対形成状態が、どのような過程を経て形成されるか明らかにする。
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Research Products
(9 results)