2023 Fiscal Year Annual Research Report
中空球状タンパク質ナノ粒子の金属イオン応答性会合を利用した物質内包系の構築
Project/Area Number |
22KJ2705
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
大原 直也 慶應義塾大学, 理工学研究科(矢上), 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2024-03-31
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Keywords | タンパク質ケージ / 自己組織化 / 刺激応答性 / 多量体 / split protein / 分子内包 / DDS |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究ではこれまで、60量体タンパク質ナノケージTIP60の会合と解離を金属イオンの結合により可逆的に制御する系の開発を行ってきた。さらに、金属イオンによるケージ構造の形成時に、別の分子を添加しておくことで、これを内包できるのではないかと考え、実際にDNAの内包を実証した。 本年度は、これらの系を拡張し異種タンパク質の内包を試みた。DNAとは異なりタンパク質はそのアミノ酸配列ごとに構造や物性が多様であるため、従来法による内包ではタンパク質の種類ごとに条件を最適化する必要があり煩雑となることが予想された。そこで、ここではTIP60を構成するサブユニットタンパク質に対して直接内包したいタンパク質を融合する手法を検討した。しかし、融合に用いることのできるTIP60サブユニットタンパク質のN末端およびC末端は、いずれもケージの外部表面に位置しており、実際にGFPを融合したところ、外部表面への提示が示唆された。そこで、ケージ内部表面に位置する新たな末端を導入することを目的として、Split-protein法に基づく改変を行った。具体的には、TIP60のサブユニットタンパク質をケージ内部に位置するループ領域で切断し二つの遺伝子に分割した。この分割フラグメントをそれぞれ精製し、in vitroで混合したところ、自発的にケージ構造へと再会合することを突き止めた。そこで、分割により生じた新たな末端に対しモデルタンパク質としてGFPを融合したところ、TIP60ケージへのGFPの内包を示唆する結果が得られた。 さらに興味深いことに、初年度に構築した金属イオン依存的な会合系と組み合わせることで、分割フラグメントの金属イオン依存的な再会合・解離が実現された。これにより、内包したタンパク質の放出制御も可能となると考えられ、タンパク質を始めとする高分子医薬品のキャリア等としての有用性を拓くことができた。
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