2022 Fiscal Year Annual Research Report
超短パルスレーザ照射によるジルコニア表面へのマイクロ・ナノ構造形成
Project/Area Number |
22J14123
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
山室 悠香 慶應義塾大学, 理工学研究科(矢上), 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2024-03-31
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Keywords | レーザ加工 / マイクロ・ナノ加工 / ジルコニア / 微細構造表面 / 表面機能 |
Outline of Annual Research Achievements |
微細な表面構造は濡れ性や生体親和性など様々な表面機能を向上させ、材料に高付加価値を付与する手法の一つである。本研究では、相変態や表面欠陥の発生を抑制した、表面微細構造加工によるジルコニアの高機能化を目指している。ジルコニアは硬脆材料であるため、非接触加工で局所的に材料を除去可能な超短パルスレーザによる微細加工法が有効であり、レーザ光と材料の相互作用を考慮した加工原理をもとに微細構造を形成する必要がある。 本年度は、超短パルスレーザに対するジルコニアの微細加工特性解明を目的として、マイクロ・ナノ構造の加工法確立と加工現象の解明を行った。また、微細加工中の加工面下の相変態現象を調査するため、実験および数値解析を用いた単斜晶の定量的解析を行った。まず極めて限定的なエネルギー範囲で生じる、入射光と表層粒子の相互作用を調査することで、ビーム径に依存しない新たなナノ構造体の形成を行った。ジルコニアは多結晶体材料であり、レーザ光が材料内部へ進入した際、結晶粒界などによる加工特性への影響が無視できない。そのため、異なるドーパント濃度を有する試料や単結晶試料を用いることで、レーザ光および材料の両視点から詳細な加工メカニズム調査を試み、エネルギー吸収など構造のスケールによる加工特性の違いを明らかにした。また、異なる加工雰囲気で照射を行い、レーザ光の入射挙動やプラズマの拡散状態を変化させることで、相変態の発生有無やその変化量を評価した。適切な照射条件を選定することで単斜晶の増加を抑制できることが明らかになり、材料強度試験でも加工面強度の維持が確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度はジルコニアの材料特性とレーザ光との相互作用に焦点を当て、マイクロ・ナノ構造の加工特性を詳細に調査した。特にナノ構造加工原理の論理的考察に取り組み、国際学術誌への投稿を行った。加工時に発生する相変態現象を評価方法として、ラマン分光光度計を利用した単斜晶の定量的分析法を行ったほか、加工面への強度試験を実施することで結晶構造変化による材料強度への影響を調査した。また、シミュレーションによる相変態発生予測へ向けた環境構築にも取り組んでおり、加工時の温度変化など引き続き解析にあたることで、現象解明を進める。加えて、これら加工手法を確立したマイクロ・ナノ構造を用いた機能性表面創成の実現に向け、表面機能性評価手法の確立のための準備および予備実験を進めている。以上より、当該年度の目標を達成しており、おおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究計画は順調に進んでおり、引き続き計画を変更せずに進める。次年度は、本年度得られた超短パルスレーザ照射におけるマイクロ・ナノ構造の加工原理を応用し、表面パターニングを行うことでジルコニア表面の機能性評価を実施する。様々な微細構造を複合的に加工することで形状の最適化を行い、加工面の物理的・化学的特性を考慮した上で濡れ性などの制御を試みる。また、相変態現象についても引き続き調査を行い、母材の材料特性を損なわずかつ高精度な加工面の実現を目指す。
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