• Search Research Projects
  • Search Researchers
  • How to Use
  1. Back to project page

2022 Fiscal Year Annual Research Report

腸内細菌代謝物プロピオン酸による過敏性腸症候群増悪メカニズムの解明

Research Project

Project/Area Number 22J14145
Allocation TypeSingle-year Grants
Research InstitutionKeio University

Principal Investigator

石原 成美  慶應義塾大学, 薬学研究科(芝共立), 特別研究員(DC2)

Project Period (FY) 2022-04-22 – 2024-03-31
Keywordsストレス性下痢症状 / 腸管運動 / プロピオン酸
Outline of Annual Research Achievements

本研究では、腸内細菌の主要代謝産物であるプロピオン酸の大腸内増加がストレス負荷時に下痢症状を誘導することを見出し、その悪化メカニズムを細胞、分子レベルで解明することを目的としている。
2022年度は、下痢増悪作用がなぜ生じるかを明らかにするため、プロピオン酸食摂餌マウスの腸管蠕動運動を測定した。ガラスビーズをマウス直腸内に投与し、排出される時間を計測した結果、プロピオン酸群にてビーズ排出時間の有意な減少を認めた。これは、プロピオン酸が腸管運動を亢進させストレス性下痢症状増悪に働くことを示唆する結果である。
次に、悪化作用の分子メカニズム解明のため、プロピオン酸受容体GPR41に着目した。これまでの研究から、GPR41はマウス大腸では上皮と神経で発現している証拠を得ていた。そこで、腸管上皮細胞特異的GPR41欠損マウス(Villin-Cre GPR41-flox)を作製した。腸管神経特異的GPR41欠損マウスは、GPR41 floxマウスに神経細胞特異的発現プロモーター(CamKIIプロモーター)制御下でCreリコンビナーゼを発現するアデノ随伴ウイルスベクターを導入し作成した。2系統のマウスを用いてストレス性下痢症状悪化の程度を検証したところ、腸管上皮細胞特異的GPR41欠損マウスで下痢症状が抑制され、プロピオン酸による下痢症状増悪には腸管上皮のGPR41が関与することが明らかになった。
中枢神経系は腸管神経系と協同し、腸管機能調節に働いている。そこで、中枢神経系の関与について、ストレスホルモン測定と、脳-腸管連絡を行う迷走神経切断時の下痢症状誘導作用によって検証した。その結果、プロピオン酸摂餌はストレスホルモン産生に影響せず、迷走神経切断マウスでもプロピオン酸の悪化作用が認められ、本研究におけるプロピオン酸のストレス性下痢症状増悪作用への中枢神経系の寄与は少ないことが示された。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

下痢症状増悪作用の解明の一環として2022年度予定していた腸管運動の解析に関して、プロピオン酸摂餌はストレス負荷を与える前の定常状態ですでに腸管運動亢進が起きているという結果を得た。一方で、拘束ストレスによる影響に関しては腸管運動測定に伴うストレスが大きいためか評価が困難であった。そのため、一般にストレス負荷時の腸管運動亢進に寄与するとされているホルモンや神経伝達物質の阻害剤投与によってプロピオン酸による下痢症状悪化作用に寄与しているかを評価することとし、そのための条件検討を進めた。現在、セロトニンに関して拮抗薬投与実験を進めている。
プロピオン酸が作用する細胞の特定に関しては、計画通り進み、腸管上皮細胞が重要であるとの証拠を得ることができた。一方で、予想に反し腸管神経細胞が発現するGPR43は下痢症状悪化には関与していないことを示す結果が得られた。すでに、公開されているsingle cell RNA-seq(scRNA-seq)データの再解析結果から、GPR41を高発現する腸管上皮細胞を特定している。
中枢神経系がプロピオン酸による下痢症状悪化作用に関与しているかを、血中のストレスホルモン濃度を測定することで検証した。その結果、ストレス負荷により血中ストレスホルモンであるコルチコステロンは増加したが、プロピオン酸摂餌による変化は認められなかった。また、腸管と中枢神経系の連絡に関与する迷走神経を切断したマウスでもプロピオン酸による影響は見られず、プロピオン酸による下痢症状悪化作用に中枢神経系の寄与は少ないことが示唆された。

Strategy for Future Research Activity

昨年度の研究結果から、プロピオン酸が作用した腸管上皮細胞から腸管神経系に何らかのシグナルが伝わり、ストレス時の腸管運動亢進に働くと考えられる。そのため、プロピオン酸が上皮細胞に与える影響と、プロピオン酸の影響を受けた上皮細胞から神経細胞へのシグナルに関して検証を進める。
プロピオン酸が上皮細胞に与える影響に関しては、腸管上皮の構成について、免疫染色及びフローサイトメトリー法で確認する。大腸上皮のフローサイトメトリーによる解析系は既に構築済である。
上皮細胞から神経細胞へのシグナルに関しては、scRNA-seqデータの再解析にてGPR41を高発現していた腸管上皮細胞に着目し検証する。この細胞が出現しない遺伝子改変マウスをすでに導入済みであり、本マウスを用いて解析を進めていく。さらに、この上皮細胞をセルソーターによって分取し、トランスクリプトーム解析を行うことで、GPR41シグナルが下痢症状を誘導する分子メカニズムの特定を目指す。

  • Research Products

    (1 results)

All 2022

All Presentation (1 results) (of which Int'l Joint Research: 1 results)

  • [Presentation] Excess propionate production in the gut exacerbates stress-induced diarrhea via GPR41 signaling in the mouse model.2022

    • Author(s)
      石原成美
    • Organizer
      Cell Symposia: The Neuro-Immune Axis
    • Int'l Joint Research

URL: 

Published: 2023-12-25  

Information User Guide FAQ News Terms of Use Attribution of KAKENHI

Powered by NII kakenhi