2022 Fiscal Year Annual Research Report
量子カーネル法の実践に向けた性能解析手法の確立および改良モデルの開発
Project/Area Number |
22J14183
|
Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
鈴木 雄大 慶應義塾大学, 理工学研究科(矢上), 特別研究員(DC2)
|
Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2024-03-31
|
Keywords | 量子カーネル法 / 量子機械学習 / 機械学習 / 量子コンピュータ |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,量子カーネル法で使用する量子カーネルの問題点を解析的に明らかにし,さらにその解決策として新たな種類の量子カーネルを確立した. 量子カーネル法は,広大な量子空間を機械学習のための特徴量抽出に活用する量子機械学習手法であり,分類などの機械学習タスクで従来手法の性能を凌駕する可能性が示されている.本手法では,量子空間におけるデータ間類似度を測る関数である,量子カーネルを用いて機械学習タスクが行われる.そのため量子カーネルの設計が非常に重要であり,これまでにはフィデリティ型の量子カーネルのみが使用されたきた.本研究では,このフィデリティ型量子カーネルを用いた場合に,量子ビット数の増加に伴いデータ間の違いが指数的に判別できなくなる「類似度消失問題」が生じることを解析的に示した.この結果は,量子実機での実装に指数的に多くの測定回数が必要となることを意味する.また未知のデータに対する性能が悪くなってしまい,量子ビット数を多く用いた場合において実用的に問題となることが判明した. さらに本年度は,この類似度消失問題に着目し,新たな量子カーネルとして量子フィッシャーカーネルを提案した.この量子フィッシャーカーネルは,古典フィッシャーカーネルを量子版へと拡張したものであり,量子状態に関する情報幾何的な量をもとに設計した新たな量子カーネルである.本研究では,Alternating layered ansatzという種類の量子回路を用いることで,本提案手法が類似度消失問題を回避しうることを解析的および数値的に示した.これらの成果は国際・国内学会で発表しており,また論文としてまとめた.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度は,量子カーネル法で使用されているフィデリティ型量子カーネルの実用面に関する問題点を解析的・数値計算的に示すことができた.また,研究計画で予定していたように情報幾何的な量に基づく新たな量子カーネルを確立し,本提案がこの問題を回避できることを解析と数値計算の観点から示すことができた.
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度に提案した量子フィッシャーカーネルを量子・古典データを用いた機械学習ベンチマークタスクに適用し,性能評価を行う.また実データに対する本提案手法の性能評価も行う.
|