2023 Fiscal Year Annual Research Report
生体膜上で誘起されるアミロイドβ凝集の分子機構解明および凝集阻害剤の開発
Project/Area Number |
22KJ2711
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
宮本 恵里花 慶應義塾大学, 理工学研究科(矢上), 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2024-03-31
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Keywords | アルツハイマー病 / アミロイドβタンパク質 / 環状ペプチド / ガングリオシド / 原子間力顕微鏡 / 脂質ラフト |
Outline of Annual Research Achievements |
アルツハイマー病 (AD)の原因タンパク質であるアミロイドβタンパク質 (Aβ) は、脳内で凝集することで細胞毒性を示す。特に高毒性なAβ凝集体の形成は、細胞膜上の脂質ラフト領域に存在するガングリオシドに促進される。本研究ではAβ凝集の起点となるガングリオシドとAβの相互作用に着目し、Aβ凝集を再現する平面膜モデルを構築し、さらにAβ凝集阻害剤を開発することを目的とした。 まず脂質ラフトを模倣した平面膜デバイスを作製し、膜上でガングリオシドに誘起されるAβ凝集を再現できる平面膜モデルを構築した。さらに、これまでにファージ提示法で同定されたガングリオシド結合性ペプチドの立体構造をもとに環状ペプチドを合成した。平面膜デバイスを用いた原子間力顕微鏡 (AFM) 観察などの評価の結果、環状ペプチドが高いAβ凝集阻害能を有することを明らかにした。 次に、よりAD患者脳内の環境を模倣した膜モデルを構築するために、軽度認知障害患者の剖検脳皮質から調製された、楔前部(Aβ凝集好発部位)と鳥距溝(Aβ凝集回避部位)由来のシナプス膜脂質を用いて再構成膜デバイスを作製した。このヒト脳脂質由来の膜デバイスとAβを相互作用させ、AD患者脳内環境を模倣した膜モデルを構築した。構築した膜モデルにおいて、楔前部におけるAβ凝集の促進の再現に成功したことをAFM観察により確認した。また、膜デバイスを表面プラズモン共鳴法などに応用し、ヒト脳領域特異的なAβ凝集の定量的な評価系構築に成功した。 最後に、本研究で構築したヒト脳脂質由来の再構成膜を用いた評価系を、これまでに開発したAβ凝集阻害剤である環状ペプチドの機能評価に応用した。その結果、環状ペプチドが楔前部由来の再構成膜上において促進されるAβ凝集に対する阻害能を有することが明らかになり、AD治療薬としての可能性が示された。
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