2022 Fiscal Year Annual Research Report
Examination of the psychophysiological mechanism of facial skin blood flow in emotion processing and its clinical application
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22J21922
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
石川 直樹 慶應義塾大学, 社会学研究科(三田), 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2025-03-31
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Keywords | 顔面皮膚血流 / 自律神経 / 感情 / 社交不安 |
Outline of Annual Research Achievements |
感情という現象には自律神経系の反応が随伴する.感情に関連した研究では,心拍や血圧などの指標が用いられてきたが,近年注目を集めつつある指標に顔面皮膚血流(顔血流)がある.これまでは,感情喚起者に対する観察者に着目し,顔血流の動態を検討してきたが,その詳細な反応動態や,機能については明らかではなかった.本研究では,これらの点について検討を行うほか,関連する社交不安などの症例における顔血流動態と顔血流が症状におよぼす影響を明らかにし,関連する精神疾患に対する臨床的アプローチの可能性を探ることを目指す. 本年度においては,他者の感情の観察という対人場面における顔血流の詳細な動態を検討した.その結果,顔血流が従来使用されていた心拍や血圧などの自律神経指標と比べて,迅速かつ敏感な反応性を持つことが明らかとなり,顔血流指標の特異性が示された.この対人場面における顔血流動態については,複数の学会で報告を行った.加えて,対人場面における顔血流変動の機能を明らかにするために,対人場面での顔血流動態と社交不安に関する特性との関連を検討した.その結果,顔血流変動と社交不安に関する特性には関連が示された.また,次の実験で,この関係性は社会的な要素を持つ対人場面においてのみ見られることがわかった.このことは,他者の感情観察時における顔血流変動の機能の検討に有益な示唆をもたらし,次年度以降にさらにこの機能の検討を進めていく予定である.加えて,今後に社交不安等の精神疾患を持つ症例における顔血流動態を検討するうえでも重要となる,これまで提案されていた顔血流の持つ機能や,その疾患との関わりについて,先行研究をまとめ,2件の総説論文を投稿し,症例における検討の準備を進めることができた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は,目的であった対人場面における顔面皮膚血流(顔血流)変動の詳細な動態について,心拍や血圧等これまで広く用いられてきた自律神経指標との比較や,細かな時間窓を設定した解析によって明らかにすることができた.なお,これらの結果は,複数の学会で報告を行い,感情に関連した研究における顔血流指標の重要性について,広く議論を行った.加えて,これまで注目がされてこなかった対人場面における顔血流の変動が,我々の対人相互作用に影響しているという点での顔血流の機能について,実験による有益な示唆を得ることができた.顔血流変動の機能については,来年度以降も続けて検討していく必要があるものの,今後に行う予定である臨床研究の意義についても実験的な支持を得た. また,本研究では,精神疾患を持つ人を対象にした,顔血流変動に関する実験を行う予定であるが,この臨床症例研究は実験参加者のリクルートが難航している.しかしながら,臨床研究を行う上で重要となる,これまで提案されていた顔血流の持つ機能や,その疾患との関わりについて,先行研究をレビューすることで研究を進めた.なお,このレビューは自律神経疾患および神経に関連した総説論文として2件発表を行った.
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Strategy for Future Research Activity |
来年度においては,第一に,これまでに得られた研究成果について,論文化を目指す.第二に,本年度得られた,顔血流変動の機能に対する示唆をもとに,具体的な機能の実証を行う.この機能の解明によっては,臨床応用の手がかりとなることも期待される.第三に,社交不安等の症状を持つ臨床症例に対する,他者観察時の顔血流変動の検討を行う.これによって,健常群と臨床群の顔血流変動についての比較が可能となり,この比較の結果および想定される顔血流の機能の解明によって,顔血流という新たな視点での臨床症例の理解や,臨床応用が期待される.
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