2022 Fiscal Year Annual Research Report
多重スケールデータの頑健オンライン次元削減法の構築
Project/Area Number |
22J22588
|
Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
鈴木 京平 慶應義塾大学, 理工学研究科(矢上), 特別研究員(DC1)
|
Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2025-03-31
|
Keywords | 頑健スパース信号復元 / MC関数 / 頑健回帰推定 / グルーピング効果 |
Outline of Annual Research Achievements |
多くの頑健スパース信号復元法では、統計的性質の異なる雑音と外れ値を区別しない定式化のため、高雑音環境下で性能が劣化してしまうことが問題となっている。また、推定精度と大域的最適性の間にトレードオフ問題が存在することも知られている。これらの問題を解決するため、2022年度は、minimax concave (MC)罰則に基づくスパース信号復元法とMC誤差関数に基づく頑健回帰推定法を凸最適化の枠組みで統合した新しい定式化を提案した。目的関数の大域的最適性を保証するため、滑らかな項が凸関数となるための必要十分条件を導出した。提案法により、高雑音環境下かつ劣決定問題の場合においても、外れ値に対して頑健にスパース信号復元が可能であることを、音声信号の雑音除去への応用を含む数値実験により実証した。さらに、提案法の定式化により、強い相関を持つ変数のグループが同時に選択されやすくなる効果(グルーピング効果)が得られることを理論的に示し、数値実験で実証した。グルーピング効果をもたらす代表的な手法であるエラスティックネットとは対照的に、入力ベクトルに高い相関がある場合、対応する係数の差の絶対値の上界が観測ベクトルの大きさに依存しないことを証明した。これにより、観測値に大きな外れ値が含まれる場合でもグルーピング効果を保つことが可能となる。これらの成果は2編の国際会議論文(MLSP)と1編の学術論文(IEEE Trans. Signal Processing)として発表した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究では、複雑な構造を持つ高次元データの構造の可視化や圧縮を可能にするため、非線形性、多重スケール性、オンライン性を同時に満たし、外れ値や欠損に頑健な次元削減法を構築することに取り組んでいる。2022年度は、その土台となる頑健スパース信号復元法の開発を行った。これらの成果は2編の国際会議論文と1編の学術論文として発表した。さらに、3月には、複数の異なるスケールを持つ多様体上に分布する高次元データの次元削減法に関する初期成果を国内研究会で発表した。
|
Strategy for Future Research Activity |
所属研究室で長年研究されてきた多カーネル適応フィルタにおける、複数の再生核によってデータの多重スケール性を適切に反映するアイデアを発展させ、本質的情報が複数の異なるスケールの多様体上に分布するデータに対応可能な次元削減法を構築する。さらに、同手法の定式化と2022年度に開発した頑健スパース信号復元法の定式化を組み合わせることにより、非線形性、多重スケール性、オンライン性を同時に満たし、外れ値や欠損に頑健な次元削減法を開発する。合成データによる数値実験により、SN比、外れ値・欠損の割合などの条件を変えて最新の次元削減法と比較し、提案法の優位性を検証する。また、異常ノードを含むネットワークや、DNAマイクロアレイなどの複雑な構造を持つ公開リソースを用いて、提案法によって効率的な次元削減が実現されることを実証する。得られた成果の発表、人脈の構築、関連分野の最新情報を収集のため、国内学会、国際会議に参加するとともに、研究成果の学術論文投稿および掲載を目指す。
|