2022 Fiscal Year Annual Research Report
マイクロ流路を統合した柔軟装着型デバイスによる生体化学物質の連続的センシング
Project/Area Number |
22J22598
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
西田 知司 慶應義塾大学, 理工学研究科(矢上), 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2025-03-31
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Keywords | マイクロ流体力学 / 分光光度計 / 構造色 / 濃度測定 / 物質検知 / スペクトル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は構造色ポリマを用いてマイクロ流路用の小型スペクトル計(分光光度計)を作製し様々な物質検知や濃度測定に利用することが目的である.本年度は,構造色ポリマの作製手法の確立および最適化,構造色ポリマの圧縮による色変化の確認,流路中物質の色・濃度と構造色ポリマの反射光との関係の確認を行った. 【構造色ポリマの作製手法の確立および最適化】 常時水中での利用を前提としない,PEGPEA (Poly ethylene glycol phenyl ether acrylate)というゴム状のポリマに着目し,構造色ポリマを作製した.先行研究を参考にし,市販のシリカコロイドを用いた場合の構造色ポリマの作成手順を見極め構築した.また加熱時間・温度等を調整することで,半日程度で構造色ポリマが作製可能となった.電子顕微鏡を用いて構造色ポリマの表面観察に成功した. 【構造色ポリマの圧縮による色変化の確認】 構造色ポリマの圧縮量と色変化を確認するため.測定用治具をCADで設計し,卓上CNCフライス盤による切削加工により作製した.LEDからの入射角と構造色の波長測定用スペクトル計への反射角を固定しながらも,構造色ポリマの圧縮量をネジやシムテープ等で変更可能な構造とした.暗室中で波長測定用のセットアップを構築し,測定に成功した. 【流路中物質の色・濃度と構造色ポリマの反射光との関係の確認】 LEDからの光を構造色ポリマにより反射させ,その反射光を流路内に照射する測定用治具を別途作製した.流路中に赤色インク水を注入し,赤色以外のスペクトルが吸収されること,濃度により吸収スペクトルの範囲が拡大することを確認した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2022年度は,「マイクロ流路上での化学物質の連続的センシング」に特化して研究を進めることとし,おおむね順調に研究が進んでいる.5月に新型コロナウイルスに感染し1ヶ月ほど呼吸機能の低下に苦しんだが,文献調査のタイミングであったため大きな影響はなかったといえる.6月まではマイクロポンプの検討をしていたが,7月からセンサの検討に移行し,10月には構造色ポリマと計測治具の作製を実施し成功した.スペクトル計測は12月までに完了し,構造色ポリマが理論通り変形・変色することを確認した.またスペクトル変化から理論通り光学濃度計測に用いることが可能であるという見込みが立った.繰返し性などの特性改善に時間を要し,現在までかかっている. 10月の時点で国内学会1件でポスター発表を行っている.また国際学会や論文の執筆も準備中である. 以上のことから,本研究課題はおおむね順調に進行していると考える.
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度は構造色ポリマによる変色の確認と,構造色ポリマの反射光を用いた光学濃度測定の確認を別のスペクトル計を用いて実施した.2023年度は実際にセンサとして利用可能であることを示すため,フォトダイオードを用いた光学濃度測定の実施と,サンプルの色変化検知をリアルタイムに同時判定することが可能かを確認する.構造色ポリマの圧縮機構の改善や繰返し性の向上,校正手順の確立などが実施すべき課題と考えている. 柔軟性の確保については,センサ自体の小型化で対応する.生体化学物質の取得に必要な柔軟性は体表面の近傍であると考えられる.小型センサは体表面から遠い場所に配置し,生体化学物質の取得部にて柔軟性を確保する. 現在,センサ部では可視光領域の液体を測定対象として進めているが,生体化学物質のなかには赤外光領域が必要なものもあると推測される.光源の変更・構造色ポリマの材料変更等で赤外光領域でも利用可能か検証する.
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