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2022 Fiscal Year Annual Research Report

高放射線環境に生息する微生物群集構造解析および優占種の性状解析

Research Project

Project/Area Number 22J22913
Allocation TypeSingle-year Grants
Research InstitutionKeio University

Principal Investigator

藁科 友朗  慶應義塾大学, 政策・メディア研究科(藤沢), 特別研究員(DC1)

Project Period (FY) 2022-04-22 – 2025-03-31
Keywords福島第一原子力発電所 / 微生物群集構造解析 / メタ16S解析 / 汚染水 / Limobacter / メタゲノム / 電離放射線
Outline of Annual Research Achievements

2011年に原子力事故が発生した福島第一原子力発電所の原子炉内の調査では,金属表面に錆やバイオフィルム様の物体の存在が確認されたが,これまで微生物を対象とした解析は行われていない.微生物には,金属表面上にバイオフィルムを形成して金属を腐食させる種類が報告されており,建屋内部の微生物の繁殖状況を把握することは,微生物腐食を抑制する手法の提供に役立つ.本研究では,2号機原子炉建屋内のトーラス室汚染水を用いて16S rRNA配列に基づく微生物群集構造解析を行なった.トーラス室汚染水(1.3×10^6 Bq/mL)は,東京電力により①上層・中層域からと,②鉄錆を多く含む最下層部からの2回に分けて採取された.微生物群集構造の結果,汚染水の微生物群集は9割以上がProteobacteriaであり,付近の水系サンプルと比べて多様性指数が低いことが明らかとなった.また,上層から中層域,最下層部を構成している微生物の多くは共通しており,上層から中層域はチオ硫酸塩酸化細菌であるLimnobacterを,最下層部では熱水噴出孔から単離されたBrevirhabdusを中心とする細菌群集の存在を見出した.さらに,微生物群集から生息環境を推定する環境トピック解析を実施したところ,最下層部では海洋環境トピックが約70 %を占める一方で,上層から中層域サンプルでは50 %の割合で排水やバイオフィルム関連トピックが占めた.これらの結果から,2号機原子炉建屋内のトーラス室では,最深部に海水が滞留し,上部には冷却水や地下水などの淡水が流入しバイオフィルムが形成されている可能性が示唆された.共同研究者らと汚染水由来の微生物の単離を試みており,今後ゲノム解析や性状解析を行なう予定である.

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

福島第一原子力発電所 2号機トーラス室由来の汚染水を用いて,微生物群集の解析および,汚染水を構成している主要な属に関する解析を行なった.汚染水(1.3×10^6 Bq/mL)は,東京電力により採取された①上層・中層域からと,②鉄錆を多く含む最下層部からの2種類のサンプルを用いており,16Sアンプリコン解析によって網羅的な微生物群集を推定した.上層から中層域,最下層部を構成している属レベルの微生物の多くは共通しており,上層から中層域はチオ硫酸塩酸化細菌であるLimnobacterが,最下層部では熱水噴出孔から単離されたBrevirhabdusが主要な属であった.汚染水中は,自然環境環境に比べて多様性が低く,流入した微生物の中でトーラス室の環境に適応するバクテリアが生息していることが考えられた.微生物群集から生息環境を推定する環境トピック解析を実施したところ,最下層部では海洋環境トピックが約70 %を占める一方で,上層から中層域サンプルでは50 %の割合で排水やバイオフィルム関連トピックが占めた.そこで,汚染水環境からバイオフィルムを形成する可能性が示唆され,最も近縁な種であるLimnobacter thiooxidance CS-K2に対する放射性抵抗性試験を行った.0, 2.5,5 Gy/hの電離放射線を6日間照射した後,生育したコロニー数は,5 Gy/hで照射したサンプルで100分の1程度まで減少した.この結果は,CS-K2株の放射線抵抗性は環境中に生息している多くのバクテリアと同程度であり高い放射線抵抗性のバクテリアではないが,トーラス室内の放射線量内で生息が可能であることを示している.これらの結果を論文として報告する予定である.

Strategy for Future Research Activity

これまでの解析によって,福島第一原子力発電所のトーラス室汚染水中からLimnobacterとBrevirhabdusを中心とする限定された微生物群集構造を決定することができた.今後は,同定した微生物の汚染水中の性状を解析するために,上層・中層域から同定された主要なバクテリアに最も近縁なLimnobacter thiooxidance CS-K2に対して,電離放射線を照射した際のトランスクリプトームの変化を解析する予定である.これにより,L. thiooxidanceが汚染水中で,電離放射線を受けた際の,DNAへのダメージに対する抵抗のメカニズムを探索できる.また,共同研究者らと汚染水中からの微生物の単離および完全ゲノムの決定を試みており,近縁種との放射線抵抗性の変化や長期間汚染水中で生息しているゲノムに対する変異の有無を明らかにしていきたいと考えている.さらに,福島県石川郡和久ではウランを含む鉱石が存在し,放射線量の高い関連地域からの微生物の採取とゲノム解析を実施する予定である.

  • Research Products

    (1 results)

All 2022

All Presentation (1 results)

  • [Presentation] 福島第一原子力発電所トーラス室汚染水に由来する微生物群集構造解析2022

    • Author(s)
      藁科 友朗,佐藤 朝子,比内 浩,Nurislam Shaykhutdinov,Elena Shagimardanova,森 宙史,齋藤 元文,眞田 幸尚,佐々木 祥人,島田 梢,土津田 雄馬,北垣 徹,丸山 茂徳,Oleg Gusev,鳴海 一成,森田 鉄兵,黒川 顕,戎崎 俊一,西村 昭彦,駒 義和,金井 昭夫
    • Organizer
      第45回日本分子生物学会年会

URL: 

Published: 2023-12-25  

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