2023 Fiscal Year Research-status Report
一細胞RNA解析によるアテローム性動脈硬化症の新規病態解明
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22KJ2731
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
木村 舞 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 特別研究員(RPD)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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Keywords | アテローム性動脈硬化症 / 一細胞RNA解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、アテローム性動脈硬化症モデルであるApoE-/-マウスへの高脂肪食投与前後の大動脈に関して、一細胞RNA解析を行った結果、動脈硬化の進展と共に骨軟骨系細胞や炎症マーカーを高発現する炎症性線維芽細胞の出現を認めており、本年度は特に骨軟骨系細胞に着目して研究を進めた。 疾患モデルマウスにおける骨軟骨系細胞の関連マーカーの発現変化を確認したところ、Bhlhe40、Sox9、Fzd9等の着目因子の発現が疾患の進行と共に上昇することが確認され、病態形成にこれらの因子が関与していることが検証できている。また、平滑筋細胞のマーカーであるSm22をtd-Tomatoで蛍光発症させるトランスジェニックマウスの動脈硬化モデルを作成し、その大動脈をBhlhe40で染色してtd-Tomatoとの分布を確認したところ、Bhlhe40とtd-Tomatoの分布は一致しており、骨軟骨系細胞は平滑筋細胞由来であると考えられた。そこで、Bhlhe40の平滑筋細胞における疾患への影響を評価するため、Bhlhe40の平滑筋特異的ノックアウトマウスの動脈硬化モデル(ApoE-/- / Bhlhe40 flox/flox / SM22α-Creマウス)を作成した。コントロールとしてはApoE-/- / SM22α-Creマウスを用いた。これらのマウスに高脂肪食を負荷して動脈硬化を進行させた後、それぞれの群における大動脈のプラークの程度を比較した結果、Bhlhe40の平滑筋特異的ノックアウトマウスではプラーク面積が減少しており、Bhlhe40が動脈硬化の進展に関与していることが検証された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、これまでに行ったアテローム性動脈硬化症モデルであるApoE-/-マウスの大動脈の一細胞RNA解析の結果をふまえ、動脈硬化の病態に炎症性線維芽細胞や骨軟骨系細胞が関わっているという仮説をたて、上記の通り、疾患モデルマウス、および平滑筋細胞を用いて研究を進めている。 その結果、炎症性線維芽細胞や骨軟骨系細胞それぞれに関連する因子が疾患の進展に関わることを示唆する結果が得られてきている。本年度は研究の中断期間もあり、実際に研究を遂行できた時間は半年程度となってしまっているが、その中では研究はおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
1) 炎症性線維芽細胞について 炎症性線維芽細胞のマーカーであるTcf21をtd-Tomatoで蛍光発症させるトランスジェニックマウスの動脈硬化モデルを用いて炎症性線維芽細胞の系統追跡を行い動脈における局在を確認することで、炎症性線維芽細胞のアテローム性動脈硬化症の病態における意義を検証する。 2) 骨軟骨系細胞について Bhlhe40やSox9の平滑筋細胞における役割を検証するため、ラットの初代血管平滑筋細胞にレトロウイルスベクターを用いてBhlhe40やSox9を強制発現させて表現型の変化を確認し、それぞれの因子の因果関係を検証する。さらに、既に得られた一細胞RNA解析のデータに関して、その解析手法の一つである軌道解析を行って、それぞれの細胞がどのように変化するかをとらえるなど、ドライ解析の面からも疾患の機序解明を行う。
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Causes of Carryover |
産前産後に半年程度、研究を中断し、その前後も計画を縮小して行ったため、全体的に使用額が少なくなった。次年度の学会参加や試薬等の消耗品の購入にあてる予定である。
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