2021 Fiscal Year Annual Research Report
Probabilistic models of zeta-functions and applications to number theory
Project/Area Number |
21J00529
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
峰 正博 上智大学, 理工学部, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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Keywords | ゼータ関数 / L関数 / 値分布 / 保型L関数 / リーマンゼータ関数の対数の反復積分 / 極値分布 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,ゼータ関数やL関数と呼ばれる一連の関数について,その値の振る舞いを確率論的な解釈に基づいて理解することを目的としたものである.とくに本年度は保型L関数と呼ばれるL関数の枠組みにおける最も基本的な対象である,楕円カスプ形式に付随する保型L関数についてその値分布を確率論の観点から考察を行った. 主要な成果として,楕円カスプ形式に付随する保型L関数について,その値が極端に大きくなる割合(極値分布)に関する詳細な漸近等式を証明した.これは確率論における大偏差理論の技法をL関数の値分布の研究に応用することで得られたものであり,部分的な結果は Y. Lamzouri 氏らによって知られていた.一方で大偏差理論における鞍点法と呼ばれる手法において,鞍点の扱いを最適化することによって,Y. Lamzouri 氏らの結果を改善したというのが本年度の主な成果であると言える. 本年度は他にも,リーマンゼータ関数の対数の反復積分によって定義される関数に対して,その値分布を遠藤健太氏と井上翔太氏と共同で研究を行った.最終的な目標は臨界線と呼ばれる鉛直直線上での値分布の結果を得ることであるが,本年度はその準備として,臨界線の右側領域における値分布を考察し,その確率論的モデルとの比較や極値分布に関する成果を得た.また,臨界線上の値分布の研究への準備的な考察も行った.臨界線の右側領域における手法を詳しく分析することで,臨界線上での結果を得るために困難が生じるポイントが明確になった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ゼータ関数やL関数の値分布について,確率論の方面からの理解がある程度進んできた.とくにゼータ関数やL関数の極値分布の研究においては,大偏差理論における様々な手法の中から最適なものを選択することで,既存の結果を改善する成果を得た.確率論の手法を整数論の課題に応用する技術に習熟したことは,本研究が順調に進展していることの証であると言える.本年度に扱ったゼータ関数・L関数は比較的単純な対象であったが,高次のオイラー積を持つジーゲルカスプ形式の保型L関数や,いわゆるオイラー積を持たないフルヴィッツゼータ関数など,より複雑な対象において同様の研究が可能かどうかは来年度の課題である.
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の準備に基づいて,ジーゲルカスプ形式の保型L関数やフルヴィッツゼータ関数などにおいて,まずは適切な確率論的モデルを構成することを目標として研究を推進する.とくにフルヴィッツゼータ関数においては,パラメータが代数的かつ無理数の場合の値分布は難関であり,未だに研究が進んでいないのが現状である.パラメータに類数等の特殊な条件を付けることで確率論的モデルの構成が上手くいくであろうことが判明しており,さらなる進展に期待が持てる.さらに余裕があれば,それらの確率論的モデルを用いた応用として,ゼータ関数・L関数の極値分布や普遍性などについても考察したい.とくにリーマンゼータ関数の対数の反復積分によって定義される関数についての臨界線上での極値分布は,引き続き遠藤健太氏と井上翔太氏と共同で研究を実施する.
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