2022 Fiscal Year Annual Research Report
フランコプロヴァンス語の再活性化における言語使用についての包括的研究
Project/Area Number |
21J00775
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Sophia University |
Research Fellow |
佐野 彩 上智大学, 外国語学部, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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Keywords | フランコプロヴァンス語 / 言語再活性化 / フランス / ブレス地方 / 言語使用 / 言語シフト / 二言語使用 / 文化遺産化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、フランス、イタリア、スイスにまたがる地域のロマンス系言語であるフランコプロヴァンス語の再活性化について、特にフランスのブレス地方に焦点を当て、フランコプロヴァンス語の言語使用を包括的に調査・検討するものである。2022年度は主に、(1)口頭発表と論文投稿、(2)フランスでのフィールドワークを行った。 (1) ブレス地方におけるフランコプロヴァンス語からフランス語への言語シフトと言語再活性化の活動の進展について、インタビュー・データと資料をもとに、歴史的な観点から分析・考察し、日本ロマンス語学会第60回大会(2022年5月、オンライン)にて口頭発表を行った。また、この口頭発表をもとに論文を執筆し、学会誌『ロマンス語研究』に投稿した。 (2) 2023年3月にフランスでフィールドワークを実施した。2022年8月から9月に実施したフィールドワーク(2021年度に実施する予定だったが、新型コロナの影響で延期)で明らかになった現地の状況の変化を検討した結果、観察による言語使用の調査を縮小し、話者へのインタビューに重点を置いて言語使用の調査を行うこととした。インタビューでは、言語文化団体に所属する話者9名に対して、自身のフランコプロヴァンス語の言語使用の変遷と現状について、詳細に調査を行った。その結果、フランコプロヴァンス語とフランス語の日常的な二言語使用が一部の話者によって続いていること、フランコプロヴァンス語の断片的な使用が一部の家庭内で行われていることなどが明らかになった。 また、言語文化団体の活動や会議の参与観察を行い、言語文化団体の活動の場におけるフランコプロヴァンス語の使用を調査したほか、言語文化団体以外の関連する分野でのフランコプロヴァンス語の使用と位置づけに関する調査に着手し、博物館の職員に対するインタビュー等を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新型コロナの影響や関係者の高齢化による現地の状況の変化により、調査の方法を一部変更したものの、話者の言語使用について一定の具体的なデータを得ることができた。また、予定していた口頭発表を行い、論文を執筆・投稿し、ブレス地方における言語状況の変遷と言語文化団体の活動の展開についての考察をまとめることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
フランスでのフィールドワークを継続し、2022年度に実施した言語文化団体に所属する話者へのインタビューを補完する調査と活動の参与観察を行い、言語使用を調査する。さらに、地域社会におけるフランコプロヴァンス語の位置づけと使用について検討するために、言語文化団体以外の関連する組織等を対象に調査を行う。また、2022年度に行った調査をもとに学会等での口頭発表と論文の執筆・修正を行う。
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Remarks |
佐野彩「フランスのブレス地方におけるフランコプロヴァンス語の復興・再活性化」『上智大学国際言語情報研究所 年次報告 2021年度』2022年、38~41頁。 佐野彩「文化遺産としての言語」『ことばと社会』24号、近刊短評、三元社、2022年、304頁。
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