2021 Fiscal Year Annual Research Report
忘却過程を考慮した強化学習モデルによる計算論的精神医学研究
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20J01464
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Senshu University |
Principal Investigator |
遠山 朝子 専修大学, 文学研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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Keywords | 計算論モデル / 計算機シミュレーション / 意思決定 / 精神障害 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,忘却過程の個人差を抽出するのに特化した選択課題と計算論モデルを用いて,うつなどの精神障害を特徴づけることを目的としている。本年度は,昨年度に行った実験の解析と,その結果を踏まえた実験の実施およびその解析を行った。 まず,既存データの解析であるが,こちらは,様々に課題条件を変えた5パターンの2腕バンディット課題を実施し,600名のデータを得ていた。このデータで,毎試行の結果のフィードバックを2値で与える場合(あたり,はずれ)と,ポイント(1~9)で与える場合の,参加者のパフォーマンスや推定されるパラメータへの影響を検討した。解析の結果,モデルへのあてはまりの良さや,個人内のパラメータの安定性は,ポイントで結果を与える場合の方が良かった。ただし,推定された忘却過程のモデルパラメータは,どちらの課題設定でも平均値がとても小さく,個人差を捉えるには難があることが分かった。 そこで本年度は,選択肢の数を3選択肢,4選択肢に増やして検討を行った。選択肢が増えることで,忘却の効果がより顕著になることが予測されるからである。計算機シミュレーションで課題の事前検討を行ったのち,オンライン実験を実施し,400名のデータを得た。解析の結果,予想通り忘却率の平均値の上昇がみられ,さらに選択肢が多い方が平均値が大きかった。なお本実験ではパラメータ推定値の安定性を確認するため,各参加者には同じ課題を刺激を変えて2回行ってもらった。2回のパラメータ推定値の相関を確認すると平均的に0.5以上であり,ある程度安定して個人差を推定できていたと言える。 なお,モデルパラメータと質問紙スコアとの関係も検討し,特に3碗バンディット課題において,忘却率の高い個人はうつの傾向が高く,楽観性が低い,など,これまで行ってきた研究と同様の傾向が確認できた。現在これらの結果についてまとめ,発表する準備を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実験室実験で予定していたものをオンライン実験中心に切り替えるなどの変更はしたものの,概ね当初の計画通りに進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,これまで得たデータの解析を引き続き行い,論文や学会にて発表する準備を進める。また,忘却課題のパラメータを取り出すための課題作成に関する検討は概ね終了したので,今後はこの課題を用いて精神障害とモデルパラメータの関係についてさらなる検討を実施する。
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