2022 Fiscal Year Annual Research Report
忘却過程を考慮した強化学習モデルによる計算論的精神医学研究
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20J01464
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Senshu University |
Research Fellow |
遠山 朝子 専修大学, 文学研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2024-03-31
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Keywords | 計算論モデル / 意思決定 / 精神障害 / 信頼性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,忘却過程の個人差を抽出するのに特化した選択課題と計算論モデルを用いて,うつなどの精神障害を特徴づけることを目的としている。 本年度は,これまでに行った実験の解析結果を論文としてまとめる作業を進めた。当該実験では,選択課題で用いる選択肢の数や,試行数,フィードバックの与え方などを様々に試しており,そこで得られたデータに強化学習モデルをあてはめて,個々人の忘却率を推定している。このパラメータ値が大きいほど,学習された価値がデフォルトの価値へ回帰しやすい(学習の効果が消えやすい)。なお,実験参加者は精神障害に関連した種々の質問紙に回答しており,これらのスコアと推定された忘却率との相関を算出したところ,忘却率が大きい個人ほど,うつの傾向が高く, 神経症傾向も高い傾向があった。逆に忘却率が小さい個人ほど,楽観性や外向性は高い傾向があり幸福度も高いことが確認されている。準備中の論文では,その他に,どのような課題設定が個人差を捉えるモデルパラメータ推定に適しているかなどをまとめている。 さらに,今年度は,忘却率のみならず,強化学習モデルの基本的なパラメータがそもそもどの程度安定して推定されるものなのかについて,既存のデータを再解析し,その検討結果を国際紙に論文として投稿した。このデータでは1.5か月の間隔をあけて,同じ質問紙と同じ行動課題を同じ参加者に課している。その結果,質問紙のスコアに比べて強化学習モデルのパラメータは再検査信頼性が低くなること,モデルパラメータによっても個人内安定性に差があることなどが分かった。現在は,投稿した論文の査読結果に基づきリバイスをしている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の後半は中断期間に入るが,前期にすべきことはある程度順調に進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,これまでの研究成果を発表するために論文執筆を進める。
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