2021 Fiscal Year Annual Research Report
Global Grass-roots Movements of Persons with Psychosocial Disabilities in Africa
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21J00395
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
伊東 香純 中央大学, 文学部, 特別研究員(PD) (80899039)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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Keywords | 精神障害 / 低開発 / 社会運動 / 当事者 / アフリカ / 多様性 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度は、アフリカでのフィールドワークを予定していたが、新型コロナウイルス感染症の流行により実施できなかった。このため、オンラインでインタビュー調査をおこない、渡航費にとして予定していた分の研究費を2022年度に繰り越した。2022年度には、前年度の予備調査の知識や人脈を活かして、ウガンダ、ルワンダ、ケニア、タンザニアの都市部で6週間のフィールドワークを実施できた。 文書資料の収集と、障害者の社会運動組織で活動した経験を持つ12名にインタビューをおこなった。文書資料は、当初期待していたほど収集できず、口述資料収集の重要性が一層明確になった。他方で、これまでほとんど研究の蓄積のないアフリカの精神障害者の社会運動についての貴重な証言を得ることができた。その結果、これらの地域の運動には、精神障害を持つ当事者としての運動がそれほど重視されていなかったり、薬物療法にアクセスするための活動をしていたりといった、特徴を持つ可能性があることが示唆された。これは、先行研究で検討されてきた欧米の運動とは相反する特徴であり、このような差異がありつつ、どのようにグローバルに連帯してきたのか、してこなかったのかを明らかにしていくことが本研究の重要な課題となる。加えて、2023年度以降のフィールドワークをより充実したものにするための、各地の運動団体に関する情報や人脈を得ることもできた。 今年度の調査結果は、これから査読付き論文などとして発表していく準備を進めているところである。その準備として、昨年度の調査結果を中心とした研究成果を学会で報告し、有益なコメントもらうことができた。それを踏まえて、来年度以降、査読付き論文として発表していくための準備を進めている。また、インタビューデータを文字起こしし、インタビュイーの許可が得られた場合には、ウェブサイト上に公開した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
アフリカの精神障害者の社会運動について、インターネット、論文、統計資料等に公開されている情報は非常に少なく、信頼性が低いものも少なくない。このため、日本国内に居ながらにして文書資料を手掛かりに、運動の歴史を記述していくことはほとんど不可能である。そこで2021年度には、オンラインでインタビュー調査を実施したものの、インターネット回線の弱さや人脈の少なさ等により、研究目的を達成するために十分な調査を実施することはできなかった。 比較して、2022年度には東アフリカ4カ国でフィールドワークを実施でき、研究を大幅に前進させることができた。ただし、昨年度と比較して大幅に緩和されてはいたものの、依然として新型コロナウイルス感染症の流行による海外渡航制限は残り、特にフィールドワークする地域の選択に影響があった。具体的には、当初はザンビアでのフィールドワークを計画していたが、外務省の感染症危険レベルに基づく渡航制限により、実施できなかった。 そのような中でも、東アフリカ地域の4カ国で活動する12名の活動家にインタビューを実施できた。今年度がアフリカでフィールドワークを実施する初めての年であったため、調査協力を得るのに苦労するだろうと推定していたが、昨年度の調査で築いた人脈などを活かして、当初想定していた以上に多くの方から貴重な証言を得ることができた。 他方で、現地に行けば、アフリカ地域の精神障害に関する文書資料の収集もある程度できるのではないかと推測していたが、大きな成果を得られなかった。 研究成果の発表について、調査データのアーカイブについての査読付き論文を発表できた他、社会学、医療社会学の学会での報告もおこなった。これらで得たコメント等は、本研究の成果を発表していく上で活かせるものである。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の調査により、2023年度はザンビア及びガーナ、政治情勢が許せばエチオピアの首都を中心とする地域でのフィールドワークが有効であり可能であると判断し準備を進めている。いずれの地域も精神障害者の組織があり、トランスナショナルな活動をおこなっている。それぞれの国に2週間強滞在し、現地の精神障害者組織の関係者にインタビューを実施するとともに、文書資料を収集する。インタビュー対象者として予定している人の中には、既に調査協力の承諾を得られている人もいる。 研究成果の発表について、2022年度及びそれ以前の調査の成果を基にした査読付き論文の投稿を予定している。論文投稿に向けた、社会学、医療社会学、障害学の国内学会、国際学会での報告も計画している。加えて、ウェブサイト上での収集した情報の整理、公開もこれまで通り継続していく。
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