2022 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22J40125
|
Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Tokyo Denki University |
Research Fellow |
中村 紘子 東京電機大学, 理工学, 特別研究員(RPD)
|
Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2025-03-31
|
Keywords | 反実仮想 / 因果推論 / 責任帰属 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、「もしAならばBだっただろう」という反実仮想条件文が、「Aの場合にBがどの程度生じそうか」という出来事の生起確率の判断と、反実仮想に基づく因果判断にどのような影響を与えるかを明らかにし、またその文化差を検討することを目的としている。 2023年度は、反実仮想条件文「もしAならばBだっただろう」が真である確率の判断と、「Aが生じたためBが生じたか」といった反実仮想に基づく因果推論や、「AはBに責任がある」といった責任帰属との関連を検討した。先行研究において、反実仮想条件文や反実仮想に基づく因果推論や責任帰属について、 Aの場合に B が生じる条件付き確率 P(B|A) と等しいとする立場と (Over et al., 2007)、Aが生じる確率とAの場合にBが生じる条件付き確率の同時確率 P(A) * P(B|A) とする立場 (Petrocelli et al., 2011) がある。本研究課題において、日本人参加者を対象に、反実仮想条件文と反実仮想に基づく因果推論、責任帰属の関係を検討したところ、反実仮想条件文が真である確率は条件付き確率をもとに判断する傾向が示された。一方、因果推論や責任帰属ではAとBの同時確率をもとに判断が行われやすいことが示された。これらの結果は、反実仮想が真である確率と、反実仮想に基づく因果推論や責任帰属では異なる判断基準が用いられている可能性を示すとともに、反実仮想推論における文化差の可能性を示唆している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の目的は、「もしAならばBだっただろう」という反実仮想条件文が、「Aの場合にBがどの程度生じそうか」という出来事の生起確率の判断に及ぼす影響とその文化差を明らかにすることである。今年度は、日本人参加者における反実仮想条件文に対する確率判断の特徴を明らかにするとともに、欧米で行われた先行研究との違いから、反実仮想に基づく推論の文化差の可能性を示唆しており、研究目的の解明に寄与する結果が得られたといえる。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後の研究推進方策として、文化間比較研究を行い、反実仮想条件文が真であると判断される確率について、日本人参加者で得られた結果が、異なる文化でも再現されるかを検討する。この比較研究では、異なる文化的背景の参加者間で、統一された実験プロトコルを用いることで各文化における反実仮想の確率判断の差異を明らかにする。 反実仮想が事象の生起確率の判断に与える影響を理解するため、現実世界に即した多様なシナリオを用いた実験を実施する予定である。このアプローチにより、反実仮想における内容効果や文脈の効果を明らかにするとともに、日常的な事象の生起確率の判断における反実仮想推論の影響を解明することを目指す。 これまでの研究で得られた成果を国内外の学会で発表するとともに、学術誌に論文を投稿する予定である。
|