2021 Fiscal Year Annual Research Report
他者との繋がりが認知機能に与える影響をOxytocin神経回路に着目して解明する
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21J20036
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
高橋 純平 東京理科大学, 東京理科大学 薬学研究科 薬科学専攻, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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Keywords | Oxytocin / アルツハイマー型認知症 / 認知機能 |
Outline of Annual Research Achievements |
Oxytocin(OXT)は社交性(他者との社会的接触行動)に関与することがよく知られている。またヒトを対象とした報告において、他者との社会的接触行動が乏しい「孤独」はアルツハイマー型認知症(AD)の発症リスクとなり得ることが示唆されている。このように、社交性はADの認知機能障害と何かしら関連性があると考えられるが、その詳細については検討されていない。本研究は、社会的接触による認知機能への影響にOXTが関与していると考え、OXT神経回路の役割及び作用メカニズムを明らかにし、社交性と認知機能の関連性を解明することを目的とする。昨年度は、「1. OXTがADモデルマウスの認知機能障害に対して改善作用について明らかにする」、「2. 室傍核(PVN)に局在するOXT神経が制御する脳領域と認知機能について明らかにする」について研究を実施した。 AD発症の原因分子の一つであるAβによる認知機能障害モデルマウスを作製し、そのモデルにおいてOXTが改善することを見出した。その内容については、論文投稿を完了させた。現在、査読中である 内因性OXTの検討は、興奮性DREADD(M3Dq)を組み込んだアデノ随伴ウイルスをOXT-iCreマウスのPVNに投与することで、OXT神経特異的制御を可能にした。M3Dq選択的刺激薬であるCNOを腹腔投与することで、OXT神経特異的な活性化させた。CNO投与群では、溶媒群に比べて、長期物体認知能が向上することを見出した。本研究内容は合計で3回学会発表を行った。そのうち、パラレル脳センシング技術研究部門シンポジウムでは、優秀賞に選出されている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画通り、本年度は、「PVNに局在するOXT神経が制御する脳領域と認知機能について明らかにする」を目的として研究を行った。この検討には、OXT神経特異的な制御を可能にすること、加えて、複数の認知機能行動評価系を用いた検討を予定としていた。これまでに評価系の安定性に問題が指摘されていたが、今年度は、評価系の見直しに取り組み、その結果、再現性の優れた精度の高いデータの取得可能な系の構築に成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、「PVNに局在するOXT神経がADモデルマウスの認知機能障害に対する改善作用を明らかにする」について研究を実施する予定である。具体的には、ADモデルマウスを作製し、OXT神経を特異的に活性化させることで、ADモデルマウスで認められる認知機能障害・Aβの蓄積などの病理学的変化が改善するのか検討する予定である。さらに、来年度、「社会的孤立(単離飼育)がAD発症の促進させる要因となっているのか」について研究する予定である。具体的には、ADモデルマウスを単離飼育することで認知機能障害及び病理学的変化が、群飼育群と比較して、促進・悪化するのか検討する予定である。そのために、今年度は、その準備として、単離飼育の期間による認知機能・脳内変化(例えば、OXT神経活動性)の変化を観察する。
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