2022 Fiscal Year Annual Research Report
ロジスティック項付きケラー・シーゲル系の臨界現象の解明とその応用
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22J11193
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
田中 悠也 東京理科大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2024-03-31
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Keywords | 走化性方程式 / 解の爆発 / 非線形拡散 / Lotka-Volterra競合モデル / 感染症モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
増殖や死滅を考慮した生物の集中現象を記述するロジスティック項をもつKeller-Segel系や, Lotka-Volterra型2種走化性方程式系, ロジスティック項をもつ流行・移流モデルの解挙動の臨界条件を解明するため, 以下の成果を得た: 1)東京理科大学の横田智巳教授との共同研究により, ロジスティック項をもつ退化放物・楕円型Jager-Luckhaus系に対して, 非退化拡散項をもつ近似問題からの極限移行により有限時刻で爆発する解の存在を示した. 解の爆発の条件は非退化拡散項をもつ問題で現在得られている最良の条件と同じである. 本研究により解の正則性が保証されない問題の解の爆発に対する新たな手法を開発できた. 2)1)の研究手法をロジスティック項をもつ退化放物・楕円型Keller-Segel系に応用して爆発解の存在を示した. 3)横田智巳教授, 京都教育大学の水上雅昭氏との共同研究により, Lotka-Volterra型2種走化性方程式系に対して, 解のプロファイルを導き, 解の有限時刻爆発を示した. また, 類似問題に対して, 解の単調性を導出して解の有限時刻爆発を示した. これまで解の有界性や安定性しか得られていなかった本問題に対して, 初の解の爆発の結果を得ることができた. 4)水上雅昭氏との共同研究により, 解の爆発を促す生成項が一つだけのLotka-Volterra型2種走化性方程式系に対して, 解の非同時爆発を示した. 5)東京理科大学の千代祐太朗氏, 内田綾子氏, 横田智巳教授との共同研究では, ロジスティック項をもつ感染症モデルに対して, Lyapunov関数の構成と補助関数の導入により定数定常解の大域的漸近安定性を示した. 上記の成果は国際会議「Equadiff 15」や「日本数学会」など国内外の研究集会で発表し, 論文にまとめて専門誌に投稿した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2022年度の研究計画における2次元の場合のロジスティック項をもつKeller-Segel系や放物・放物型Keller-Segel系の解の爆発は難問であるため, 退化型拡散項をもつ場合の研究を優先的に行った. ロジスティック項をもつ退化放物・楕円型Jager-Luckhaus系及びKeller-Segel系における解の爆発の研究では, モーメント解という新しい解の枠組みを導入し, さらに, 一意性が保証されない解の延長に関する議論を取り入れるなどして, 新規性の高い成果を上げることができた. Lotka-Volterra型2種走化性方程式系に対しては, 解のプロファイルや解の単調性を導出することで, これまで得られていなかった解の爆発を示すことができ, Lotka-Volterra型2種走化性方程式系における研究が大きく進展した. さらに, 解の爆発を促す生産項が一つの場合には解の非同時爆発が起きることも解明できた. ロジスティック項をもつ感染症モデルに対しては, Lyapunov関数の構成による定数定常解の安定性を示すことができ, ロジスティック項をもつ流行・移流モデルにおける解挙動の研究の足掛かりとなる成果が得られた. 以上の理由からおおむね順調に進展していると判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
ロジスティック項をもつKeller-Segel系に関しては, これまでの研究手法や類似問題を扱い, 2次元の場合や放物・放物型の問題に対する解の爆発について検討する. Lotka-Volterra型2種走化性方程式系については比較関数の構成を行い, 解の同時爆発について研究を行う. また, 解の爆発の研究をもとに解の不安定性についても研究を行う. ロジスティック項をもつ流行・移流モデルについては, ロジスティック項をもつ感染症モデルに対するLyapunov関数や補助関数をもとに, 解の挙動について研究を進める. 得られた結果は「The 13th AIMS Conference on Dynamical Systems, Differential Equations and Applications」などで報告し, 専門家と情報交換を行うことで研究の推進を図る.
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