2022 Fiscal Year Annual Research Report
高感度X線偏光観測衛星IXPEによるマグネター磁気エネルギー解放機構の解明
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22J12664
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Tokyo University of Science |
Research Fellow |
内山 慶祐 東京理科大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2024-03-31
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Keywords | X線天文学 / マグネター / 中性子星 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、マグネターの超強磁場中性子星仮説の検証を目的とし、X線偏光観測衛星IXPEを用いてマグネターのX線偏光観測を行った。現在発見されているマグネターの中で最も明るい4U 0142+61の偏光観測を行い、有意な偏光を得ることに成功した。 マグネターはB~10^14 G以上に及ぶ表面磁場を持つとされる中性子星である。臨界磁場である4.4*10^13 Gを超えると量子力学における摂動が破綻し、その結果真空が磁場に対して複屈折性を持つ可能性が示唆されている。マグネターに大気が存在する場合、磁場に巻きつけられ運動する大気中の荷電粒子との散乱により、表面放射は磁場に対して垂直な方向の偏光成分が卓越する。それらの偏光が真空複屈折により、外部磁気圏での磁場の方向に揃えられることで得られる偏光度は80%以上になると予測されている。このような高い偏光度は真空複屈折が成立しているときにのみ得られるため、80%以上の高い偏光度が得られれば、マグネターに真空複屈折を引き起こす超強磁場が存在することの証左になる。 実際に観測で得られた偏光度は、2-3 keV付近ではは約15%であり、5 keV付近でいったん0%程度まで低下した後、高エネルギー側では約30%に上昇していた。さらに偏光角は、低エネルギー側と高エネルギー側でちょうど90度方向が異なり、偏光度が0%になる5 keV付近で、偏光角が90度回転していることが分かった。 観測結果は予想から外れており、当初想定していたモデルを適用できなかった。そこで我々は観測結果を説明可能な理論モデルを探索し、マグネターは超強磁場を持ち大気が存在していないと仮定したモデルで観測された偏光の振る舞いを再現可能であることがわかった。本研究の内容はIXPEチームとして論文化した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通りにマグネター 4U 0142+61の観測に成功し、論文化を行った。得られた結果は、当初の予測とは異なっていたが、マグネターが超強磁場を持つ中性子星であるというモデルと矛盾がなかった。以上より、概ね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
IXPEでは2023年度にマグネター1RXS J170849を観測する予定である。複数のマグネターを観測しそれらの結果を比べることで、今回の4U 0142+61で得られた結果がマグネター全般に共通した性質を示すものなのか、それともマグネター毎に固有の性質を示すものなのかを明らかにすることができる。本研究は今後4U 0142+61と1RXS J170849の観測結果をまとめ、共通した性質を探ることで強磁場中性子星仮説の検証を進める。
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