2023 Fiscal Year Annual Research Report
高感度X線偏光観測衛星IXPEによるマグネター磁気エネルギー解放機構の解明
Project/Area Number |
22KJ2810
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
内山 慶祐 東京理科大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2024-03-31
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Keywords | X線天文学 / マグネター / 中性子星 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、マグネターの超強磁場中性子星仮説の検証を目的とし、X線偏光観測衛星IXPEによるマグネターの偏光観測を実施した。マグネターに大気が存在し超強磁場による真空複屈折が実現している場合、80%以上の高い偏光度を得ることが予測されている。このような高い偏光度を得るためには真空複屈折の効果は必要不可欠であり、すなわち高い偏光度の観測がマグネター超強磁場仮説の直接的な証拠となるというのがモチベーションである。今回観測したマグネターは4U 0142+61と1RXS J1708の2つであり、どちらからも有意な偏光を得ることに成功した。 4U 0142+61で観測された偏光度は2-3 keVで約15%であり、5 keV付近で一度0%まで低下した後、6-8 keVで約35%まで上昇していた。1RXS J1708で観測された偏光度は2-3 keVでは約20%であり、6-8 keVでは約80%とエネルギーとともに上昇していた。 観測の結果、マグネターの偏光特性には個性があることがわかった。2天体で共通しているのは低エネルギー側での偏光度が低いことである。これはマグネター表面に大気が存在していないことを示唆しており、凝縮した地殻表面が直接見えている可能性が高いことがわかった。1RXS J1708からは80%と想定されていた高い偏光度が得られたものの、放射エネルギーから見積もると5度程度と非常に狭い領域から放射されていることがわかった。この場合真空複屈折の効果がなくとも高い偏光度が得られることがわかっており、この結果が直ちに超強磁場中性子星仮説の決定的な証拠にはならなかった。しかし、2つの観測結果はどちらとも強磁場があると仮定したモデルで矛盾なく説明できており、X線偏光観測を用いることでマグネターの強磁場中性子星仮説を支持する傍証を得ることに成功した。
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