2023 Fiscal Year Annual Research Report
父方の血縁選択の働き易さからみる霊長類の社会性の進化メカニズム
Project/Area Number |
22KJ2819
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | Toho University |
Principal Investigator |
石塚 真太郎 東邦大学, 理学部生物学科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2024-03-31
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Keywords | 霊長類 / 血縁選択 / ニホンザル |
Outline of Annual Research Achievements |
哺乳類において、父方の血縁者間の血縁選択がどのように働き、それがどのように個体間の社会関係に影響しているのかについては十分に調べられていない。集団内に複数のオスが在籍する種では、オスの繁殖の偏りが大きくなるほど集団内の父方の兄弟姉妹の数が増え、父方の血縁選択が働き易くなることが予想され る。本研究では、集団内の父方姉妹の数が異なるマカカ属の比較研究により、集団内の父方姉妹の数がメス間の親和・非敵対性に与える影響についての研究を進めている。 2023年度は、父方の血縁選択の働き方の変異について分析するため、香川県小豆島に生息する別の群れの研究に着手した。現地調査により、個体識別、DNA試料の収集を進めた後、行動・遺伝学的データを収集した。2022年度にメス間関係についての論文を出版したため、2023年度は父子間や雌雄間の社会交渉に着目して行動観察をおこなった。 研究対象の遺伝的背景を探るため、分子系統地理的研究を実施した。香川県小豆島の全域からニホンザルの糞試料を収集し、DNAを抽出した。抽出DNAを用い、ミトコンドリアDNAコントロール領域約400bpの塩基配列を決定した。分析の結果、小豆島のニホンザルのmtDNAの遺伝的多様性は比較対象であるニホンジカやイノシシよりもはるかに高いことが明らかになった。また、本研究課題の対象としているニホンザルは、島内のもっともメジャーなタイプであった。この結果は、これまでの野外調査で得られた行動データの結果の解釈の上で有用である。
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