2022 Fiscal Year Annual Research Report
マイマイカブリの活動時間帯に着目した体色多型の維持機構の解明
Project/Area Number |
21J23473
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Toho University |
Research Fellow |
福田 真平 東邦大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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Keywords | マイマイカブリ / 適応進化 / 体色 / 構造色 / デジタル画像 / オサムシ / 虹色 |
Outline of Annual Research Achievements |
マイマイカブリを含む甲虫の鮮やかな体色は構造色によるものであることがわかっている。そこで本年度はマイマイカブリを用い、構造色特有の発色を定量化する手法の開発に取り組んだ。その結果、北海道に分布する緑色のエゾマイマイカブリのデジタル画像から、全ピクセルのRGB値を取得し、発色特性である「明るさ」「色相」「虹色」をそれぞれ定量化することができた。さらに、これまで甲虫の体色定量化法として適用されてきたスペクトル測定法と本手法を比較したところ、「明るさ」と「色相」は従来の手法と同程度、「虹色」の定量化に関しては、デジタル画像による本手法のほうが、再現性が高いことが明らかとなった。デジタル画像による定量化手法は、スペクトル測定法よりも比較的安価に機材を揃えられることを考えると、甲虫の構造色を定量化する際に強力なツールとなる可能性が考えられる。今後、異なる体色のマイマイカブリや甲虫に本手法を適用し、より利用範囲が広い手法として開発を進めていく。また、糞虫やハムシなどの甲虫は地理的な環境要因により体色の変化を説明することができることが知られている。そこで本研究では、マイマイカブリの体色と環境要因の間に相関関係があるのかを明らかにするため、全国的にマイマイカブリのサンプリングを行った(合計230個体)。そして開発した構造色の定量化法を用い、環境要因と体色の傾向を一般化線形混合モデル(GLMM)による解析によって調べた。その結果、マイマイカブリの体色はいくつかの環境要因と相関関係を示すことがわかってきた。今後、サンプル数を増やし、別のパラメーターを解析に加えることで、検証を進めていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は、構造色の定量化手法の開発、本手法を用いたマイマイカブリの体色と環境要因の傾向を明らかにすることができた。しかし、マイマイカブリと捕食者の活動時間の調査に関しては、マイマイカブリのサンプリングは実施することができているものの、捕食者の活動時間を調べる野外調査が、当初の予定よりも進んでいない。マイマイカブリのサンプリングがすべて終了次第、センサーカメラによる捕食者の活動時間の特定を進めていく。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、デジタル画像による構造色の定量化法の研究は、他の体色のマイマイカブリや異なる甲虫のデータを加え、論文として公表する。また、本手法を用いたマイマイカブリの体色と環境要因との関係を調べた研究に関しても、現在飼育している個体の測定を終え次第、論文の執筆を行う。 マイマイカブリの活動時間に関しては、ピットフォールトラップによる野外調査と室内で繁殖した個体を用いた室内実験を組み合わせることで体色と活動時間の関係を明らかにしていく予定である。
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