2022 Fiscal Year Annual Research Report
Effect of the odors generated by the Maillard reaction on aging through inhalation
Project/Area Number |
22J00122
|
Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
横山 壱成 日本大学, 生物資源科学部, 特別研究員(PD)
|
Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2025-03-31
|
Keywords | メイラード反応 / 香気成分 / 保健的機能性 / 嗅覚生理応答 / 老化 / 線虫 / C. elegans |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では食品の加熱調理・加工時に起こる化学反応(メイラード反応)で生成する香気成分の吸入による寿命への影響について検討を行っている。本年度は、寿命を指標とした老化研究で広く用いられるモデル動物である線虫C. elegansを用いて、リジンとグルコースから調製したメイラード反応生成香気の曝露による影響について検討した。 線虫は嗅覚に優れ、香気成分によって嗜好が異なり、走化性行動(誘引あるいは忌避)が変化することが報告されている。このような嗜好の違いは、寿命に大きな影響を及ぼすものと考え、線虫のメイラード反応生成香気に対する嗜好を検討した。その結果、未加熱のメイラード反応試料に対して目立った行動の変化は認められなかったが、加熱後の試料に誘引行動を示すことが判明した。この誘引行動は揮発性の物質に対するものであり、線虫における嗅覚シグナル不全を呈する変異体(odr-3)では見られないことから、嗅覚系を介してメイラード反応生成香気に対する誘引行動が引き起こされていることが考えられた。さらに、このメイラード反応試料中の主要香気成分である2,3-dimetlylpyrazine, 2,3,5-trimethylpyrazine, 2,5-dimethyl-4-hydroxy-3(2H)-furanone (DMHF)を選抜し、同様に走化性行動の実験を行ったところ、すべての物質に対して線虫は誘引行動を示したが、その中でもDMHFに対する反応が最も高かった。 続いて、線虫にメイラード反応生成香気を継続的に曝露し、線虫の寿命を計測したところ、対照群と比較して寿命延長効果が認められ、さらには加齢に伴う運動性の低下についても、香気曝露を行った線虫で改善された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度はモデル生物である線虫での実験系を中心とした研究に取り組んだ。線虫のメイラード反応生成香気に対する嗜好(走化性行動)は、当初の研究計画には含まれていなかったものの、誘引行動を示すという非常に興味深い結果が得られた。また、継続的な曝露により寿命延長効果が確認され、シグナル伝達の変化が寄与する可能性を見出すことができた。これらのシグナル伝達経路は線虫のみならず、マウスやヒトなどの哺乳類においても保存されているため、今後のマウスでの実験系においても、その効果が期待できる。また、マウスの実験系においても受入研究室でのテーマに参画することで、行動評価および免疫組織化学的手法について習得することが出来ている。これらは今後のマウスへの実験に当たり、非常に重要な役割を担うとともに円滑な研究の遂行に役立つものであると考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
香気曝露により、線虫の寿命延長が認められたことから、インスリン/IGF-1などのシグナル伝達経路に注目する。具体的には、これら経路上に存在する遺伝子の発現を解析するとともに、変異体線虫を用いた詳細なメカニズムの解明を行う。また、このメカニズムを踏まえたうえで、加齢マウスなどを用いたメイラード反応生成香気の嗅覚刺激が生体に及ぼす影響についても迫る予定である。
|
Research Products
(10 results)