2022 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21J20035
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
市田 優 明治大学, 明治大学大学院理工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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Keywords | 力学系理論 / 偏微分方程式 / MEMS型偏微分方程式 / 退化放物型方程式 / 走化性方程式系 / 定常解 / 進行波解 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は昨年度に引き続き,古典的な連続力学系理論,ポアンカレ型コンパクト化が誘導する相空間の無限遠ダイナミクス,ベクトル場の特異点解消に関する幾何学的アプローチを融合した手法に基づいて有限時間特異性を引き起こすことが期待されている複数の偏微分方程式の特殊解の挙動やその性質を統一的にどこまで調べられるかという問題に取り組みつつ,申請時点で提示した研究課題である「3次元ODEsの無限遠まで含めた力学系の情報の取得方法」,「精密な漸近挙動の導出するための汎用的な手法の開発」の解決に向けたヒントを探った.今年度得られた成果を大別して以下に3点列挙する. 1つ目に,MEMS型偏微分方程式に関する特殊解の諸性質の解明である.MEMSとは微小電気機械システムのことであり,負冪項や勾配項の非線形性によりそのダイナミクスは非常に複雑で豊かなものとなることが知られている.今年度は空間1次元での消散双曲型の場合の進行波の挙動変化,空間1次元でのMEMS型反応拡散方程式における定常解,空間一般次元における反応拡散方程式における球対称定常解について考察し,それぞれで解挙動の豊かさの一端を明らかにすることができた.これらはそれぞれ論文として出版された. 2つ目は,空間1次元退化放物型方程式の非負進行波解に関して,これまで代表者により得られた分類結果は方程式に含まれるパラメータに関する制約が課されていたが,この制約を外し,より一般的な分類結果を得ることができた.この結果は論文として出版された. 3つ目は,走化性方程式系と呼ばれる多くの数理モデルで顔を出す方程式系における球対称定常解という基本的な解挙動について上記のアプローチを用いて明らかにした.特に無限遠方での減衰レートが空間次元に応じて変化すること,そしてそれぞれでのレートのより詳細な表示は特筆すべき結果である.この結果は論文として出版された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請時点で提示した課題の最終的な解決には至っていないものの,昨年度に生まれた特殊解の詳細な挙動の解析という派生的研究は多くの示唆を与え,相空間のコンパクト化を応用した新たな数学解析基盤を構築する予感を感じている.また,有限時間特異性を引き起こす偏微分方程式の特殊解に限定すれば,このアプローチで統一的な解析が実現できている可能性を示唆する結果を生み出しているといえる.これらの結果は手法の非自明な拡張への鍵や応用展開を生み出すものとなるため,おおむね順調に進展していると判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度では,これまでに得られたMEMS型偏微分方程式,空間1次元退化放物型方程式,一般空間次元における走化性方程式系における特殊解の挙動に関する結果を総合して,次の問いに関する研究を実施する: ・走化性方程式系における自己相似解に関する研究と3次元ODEsの無限遠ダイナミクスに取得方法の検討, ・退化型方程式における進行波の分類結果と対応するODEsの無限遠での分岐の関連性の解明, ・無限遠の分岐という視点から特殊解の解挙動の変化の関係についての一般的かつ構造的な理解
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