2021 Fiscal Year Annual Research Report
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21J21947
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
高桑 聖仁 早稲田大学, 理工学術院, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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Keywords | 水蒸気プラズマアシスト接合 / 柔軟接合技術 / フレキシブルエレクトロニクス実装技術 |
Outline of Annual Research Achievements |
人間の皮膚や洋服に貼り付けて使用する次世代ウェアラブルエレクトロニクスデバイスの実用化に向けて、デバイスのセンサーや電源となるエレクトロニクスの薄膜化や軽量化が進んでいる。2ミクロン厚という非常に薄くて柔らかい高分子ポリマーの上に有機半導体材料を用いた有機エレクトロニクスを構築する事によって、人間の皮膚が持つ複雑な3D曲面や関節などの可動部による伸び縮みにも絆創膏のように追従して貼り付ける事の出来る超薄型エレクトロニクスが開発されている。次世代ウェアラブルエレクトロニクスデバイスの構築にはこうしたエレクトロニクスの単体性能の向上とともにどのように柔軟なエレクトロニクス同士を接合するのかという実装技術の開発が必要である。本研究では、超薄型エレクトロニクスの特徴である柔軟性を損なう事がない導電接合技術の開発を目指している。 申請者は、金属表面を不活性ガスプラズマ処理により活性化させる事で、常温金属接合を達成可能な表面活性化接合に着目した。しかし表面活性化接合は、接合面の平坦性が非常に高くなければ接合達成できないという制約があり、本研究の高分子ポリマー上の表面が粗い金電極の接合に使用する事は不可能であった。そこで本研究ではプラズマ処理時のガスを水蒸気に置換し、接合面の一部にOH基を再付着させる事で、接合面が粗くてもOH基同士の化学結合によって界面の密着性が向上し、金同士の金属接合を発現させる事に成功した。本年度は、この接合のメカニズム解明と、接合した薄膜の機械的・電気的特性の把握、耐熱性の確認を行った。また、超薄型有機太陽電池と超薄型有機LEDを本手法を用いて接合しフレキシブルエレクトロニクスシステム構築を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
今年度の成果として、薄膜パリレン上の金電極表面を最適化した水蒸気プラズマ処理により表面活性化させ、金電極同士を接着剤不要で直接接合する方法を開発した。その接合メカニズムを解明するために、断面方向と面方向の2つの方向から水蒸気プラズマ照射前後の化学的な結合状態をエネルギー分散型X線分析とX線光電子分光分析をそれぞれ用いて分析をおこなった。その結果、プラズマ処理後に金の表面の一部に水蒸気プラズマに含まれるOH基が存在する事がわかった。したがって、パリレン薄膜上に蒸着した金のような粗い表面同士(およそRms=7 nm)でも接合を達成できる本手法は、金の表面活性化に水蒸気プラズマを取り入れた事で、接合面を重ねた際に一部で水素結合が発生し接合面の密着性が向上した事で、表面活性化接合が発現したと考えられる。そして、接合手法の確立とメカニズムの特定を行った事で、次に水蒸気プラズマ接合の接合手法としての評価を行った。大気中加熱試験と高温加湿試験による耐熱性評価と繰り返し曲げ試験と繰り返し圧縮試験による機械的耐久性評価、柔軟性試験を行い、従来手法との優位性を評価した。また配線技術としての電気的特性の評価も最小解像度試験と最小接合面積試験を通し、従来手法の異方導電性テープとの比較をおこない本手法の優位性を確認した。また次年度の研究計画であった実際の薄膜有機エレクトロニクス同士の接合もおこない、本手法が柔軟な次世代ウェアラブルデバイス構築に向けた実装技術として利用できる事を確認した。これらのデータを用いて論文執筆を行い、研究成果はScience Advancesに掲載された。
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Strategy for Future Research Activity |
現在は、大気中でも比較的に安定である金を接合材料として、直接接合技術を開発している。今後の研究では、金以外の金属材料の接合(銀や銅、白金など)の検討も並行しておこなう。金よりも科学的な反応性が高い材料であるため、接合に利用する水蒸気プラズマの処理条件が重要になると考えられる。金同士の接合では、プラズマ処理後に接合するか否かでプラズマ条件の最適化をおこなった。しかしながら水蒸気プラズマは、ガス流量やプラズマ出力により反応室内のラジカル状態は変化する。反応性の高い金属の接合では、ラジカル状態を定量的に考慮する事が重要であると考えられる。昨年度末に研究室に導入したプラズマ状態の分析装置を併用する事で、効率的に条件の最適化と直接接合の達成を行いたいと考えている。 また、昨年度からの実験を通し、水蒸気プラズマ処理による接合を行っても接触抵抗等の電気的な特性に影響しない事がわかっているため、複数の薄膜基板上に作製した別々の薄膜エレクトロニクス同士の実装を検討する。その際の高精細配線時に電極の幅が小さいために接合面積が低下し機械的な耐久性が低下する事が考えられるため、接合面積と機械的安定性の関係を引っ張り試験や剥離試験を用いて検討する。
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