2022 Fiscal Year Annual Research Report
芳香族エステルの脱酸素型変換反応とアリール交換反応の開発
Project/Area Number |
21J22702
|
Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
黒澤 美樹 早稲田大学, 先進理工学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2024-03-31
|
Keywords | 芳香族カルボニル化合物 / 脱酸素型反応 / 脱フッ素化反応 / phospha-Brook転位 |
Outline of Annual Research Achievements |
芳香族エステルは安価かつ容易に入手可能な化学フィードストックである。芳香族エステルの変換反応は1,2-付加や還元、アミンとの縮合反応などの「求核アシル置換反応」が知られる。最近、第二の手法として遷移金属触媒を用いた「触媒的求核アシル置換反応」や「脱カルボニル型反応」が精力的に開発されている。これらの反応では、芳香族エステルのアシルC-O結合が遷移金属に酸化的付加したアシル金属種を与える。この中間体に着目し、求核剤との配位子交換、続く還元的脱離により得られるアシル化合物を触媒的かつワンポットで還元できれば、形式的に脱酸素カップリングした化合物が得られると考えた。そこで第三の芳香族エステルの変換反応になり得る「脱酸素型変換反応」の開発に取り組んだ。現在までにパラジウム触媒による芳香族エステルの脱酸素型C-P結合形成反応およびジアリールケトンの脱酸素型マルチアリールアルカン合成法を開発している。先に述べた脱酸素型変換反応の反応機構から、異なる求核剤を用いても、phospha-Brook転位を駆動力として脱酸素型反応が進行するのではないかと考えた。そこで、今年度は芳香族カルボン酸誘導体として誘導可能な高い求電子性を有するトリフルオロアリールケトンに着目した。これを脱酸素条件に附せば、脱酸素反応が進行したベンジルトリフルオロメタンが得られると考えた。しかし、トリフルオロアリールケトン、ジフェニルホスフィンオキシドと塩基を加熱撹拌すると、思いがけず「脱フッ素化」が進行したジフルオロアリールケトンが得られた。本反応で用いるジフェニルホスフィンオキシドの当量を変えることで、モノフルオロアリールケトン、アリールケトンを選択的に得ることにも成功している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
昨年度、当特別研究員は触媒的脱酸素型変換反応によるジアリールケトンのマルチアリールアルカン合成法を報告した。ジフェニルホスフィンオキシドによるphospha-Brook転位が本反応の進行の鍵である。本反応は官能基許容性に優れ、様々なジアリールケトンからジアリールメタン・テトラアリールエタン・トリアリールメタンを一工程で合成することが可能である。また、より上流原料である芳香族カルボン酸からのワンポット合成にも成功した。さらに、本反応は医薬品化合物にも適用可能であり、誘導体化にも成功した。本研究で得た知見は、本反応の中間体を用いた官能基化反応の拡張につながる。 今年度、当特別研究員は「脱酸素型変換反応」の拡張を志向したが、思いがけず同反応条件でトリフルオロアリールケトンの脱フッ素化反応が進行することを見いだした。ジフェニルホスフィンオキシドによるphospha-Brook転位、続くβ-フッ素脱離が本反応の進行の鍵である。本反応は用いるジフェニルホスフィンオキシドの当量を変えることで、モノフルオロアリールケトン、アリールケトンを選択的に得ることにも成功している。 以上のことから本研究課題は当初の計画以上に進展していると判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後はトリフルオロアリールケトンの脱フッ素官能基化反応の開発に着手する。含フッ素化合物は医薬品や農薬などに多くみられ、広範な含フッ素化合物の合成法は有用性が高い。本手法の中間体であるジフルオロエノールホスフィナートと求電子剤を反応させれば、様々なアリールケトンが得られることが予想される。そこでそれぞれの官能基化にも取り組む予定である。 また、本手法で必要なホスフィンオキシドの当量を触媒量にするため、新規触媒の開発を目指す。開発した脱酸素型変換反応の展開として基質の拡張だけでなく、中間体を利用した新規合成法を確立できれば、「脱酸素型変換反応」のより広範な応用が期待される。しかし、本反応をさらに有用な反応に昇華させるためには高価な遷移金属触媒の使用と化学量論量のホスフィンオキシドの利用が必須であるという二つの課題がある。これらの課題を解決するため、新規触媒の開発を目指す。そして、本反応の完全触媒反応の開発に取り組む。
|
Research Products
(7 results)