2023 Fiscal Year Annual Research Report
芳香環の脱芳香族的自在修飾法の開発と脂環式骨格構築
Project/Area Number |
22KJ2892
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
加藤 弘基 早稲田大学, 理工学術院, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2024-03-31
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Keywords | 脱芳香族的官能基化 / パラジウム触媒 / 脂環式化合物 / 不斉反応 / データインフォマティクス |
Outline of Annual Research Achievements |
脱芳香族的官能基化は豊富に存在する芳香族化合物を多様な三次元骨格へと誘導可能であり、置換脂環式化合物の強力な合成法となりうる。しかし、当該手法の多くはフェノールの酸化的脱芳香族化やアジン類の求核的脱芳香族化など芳香環の電子状態に強く依存する。一方で、最も一般的なベンゼン類に対する脱芳香族 的官能基化は、その高い芳香族安定性から困難とされており、化学量論量の金属反応剤もしくは過剰量の基質を要するといった課題がある。当研究室ではこれまでに、触媒的に生成可能なπ-ベンジル-Pd中間体の特異な反応性に着目し、ブロモアレーンとTMSジアゾメタン、炭素求核剤との脱芳香族的二炭素官能基化反応を開発した。本手法では、導入した炭素官能基を活用した誘導体化により種々の多置換脂環式化合物の迅速合成に成功した。本年度は先に見いだしたブロモアレーンの脱芳香族的二炭素官能基化反応を不斉反応へと展開した。本不斉反応を確立できれば、脱芳香族化に続く誘導体化により連続不斉中心を有する多置換脂環式化合物の構築が可能となる。しかし、エナンチオ選択性の制御には綿密な触媒設計と膨大な量の不斉配位子検討が求められる。実際に市販および合成した不斉配位子を試したが、鏡像体過剰率は満足できる結果ではなかった。効率的な不斉触媒開発を目指し、共同研究によりデータインフォマティクス手法を用いた不斉触媒開発研究に着手した。研究遂行方針としては最小限の実験データと中間体および遷移状態構造の密度汎関数理論(DFT)計算のデータを収集する。これらを回帰分析することで不斉発現に重要な立体情報を可視化でき、この情報をもとに効率的な触媒最適化が可能となる。実際に得られた立体情報を活用して新規触媒設計することで高いエナンチオ過剰率を示す触媒の開発に成功した。また、DFT計算を用いた機構解明研究を実施し、想定と異なる不斉発現機構の提唱至った。
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