2022 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21J22803
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
杉本 海里 早稲田大学, 理工学術院, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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Keywords | 社会的認知 / 期待違反 / 社会的地位 / 幼児 / 収束的思考 / 認知負荷 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、事前期待を違反する振る舞いを見せる他者に対する認知処理特性(期待違反効果)と、その背景要因の解明を目的として、幅広い年代を対象に研究を進めている。 当該年度はまず、初期発達段階における期待違反と社会的地位の結びつきを示した前年度の研究について、査読結果に基づく修正を行った。修正のための実験によって、一般的ではない振る舞いに対するポジティブ性認知が社会的地位を高く推論させた可能性が排除され、超常的振る舞いが社会的地位の推論に直接的に関わっていることが示唆された。本結果を併せて論文を再編し、改めて査読付き国際誌に投稿している。 さらに当該年度は、期待違反効果の環境要因についても検討を進めた。期待違反の影響は一般的期待の強さによって変動するため、外見などの表面的特徴に基づいて他者の心的特性や行動様式を推測するヒューリスティック利用の能力が関係する。そこで、経験によって学習・蓄積された既存知識をもとに解を発見する収束的思考に着目し、収束的思考を内包する概念である創造的思考について検討を行った。その結果、認知負荷の高い課題を行うことによって、収束的思考が促進されることが示唆された。この知見は、認知負荷が高く利用可能な認知資源量が少ない状況下では、収束的思考が促進されることで期待違反の影響がより強く表れる可能性を示す。期待違反の体験者を取り巻く環境、ならびにその人物の期待違反時の心理・生理的状態が、どのように期待違反効果に影響を与えるのか、今後さらに検討を進めていくことが求められる。なお、本研究成果は電気情報通信学会研究会にて発表し、さらにプロシーディングとして出版した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当該年度も前年度に引き続き、新型コロナウイルス感染症の影響により、幼児を対象とした対面での実験実施の機会創出に大きな制約があったが、そのような状況下で、40名を超える幼児を対象に対面実験を実施した。さらに大人を対象としたオンライン実験も実施し、その成果を研究会とプロシーティングにて公表している。ただし、前者の幼児研究は現在も査読の状況が続いていることから、やや遅れていると評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、期待違反者の信頼性認知や、期待違反者によるアドバイスへの反応、さらに認知負荷環境の操作などによって、引き続き期待違反効果の背景メカニズムの解明を進める。なお、受け入れ先の研究設備において子どもを対象とする対面実験環境が大幅に制限されることとなったため、大人を対象とした実験調査を行うことを予定している。昨年度と同様に、新型コロナウイルス感染症の影響から、オンラインでの実験調査が中心となることが想定される。
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Research Products
(5 results)