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2023 Fiscal Year Research-status Report

ゲノム寄生体が駆動する生物進化:転移因子間の軍拡競争によるゲノム機能変化の解明

Research Project

Project/Area Number 22KJ2901
Allocation TypeMulti-year Fund
Research InstitutionWaseda University

Principal Investigator

川崎 純菜  早稲田大学, 理工学術院, 特別研究員(PD)

Project Period (FY) 2023-03-08 – 2025-03-31
Keywords転移因子 / 機能ゲノミクス / ゲノム進化 / RNA二次構造 / 軍拡競争
Outline of Annual Research Achievements

転移因子(TE)は自身のコピーを異なるゲノム位置に挿入する能力を持つDNA配列であり、ヒトゲノムの40%以上を占める。長年TEは生物ゲノムを損傷・侵略する「ゲノム寄生体」と考えられてきた。一方で、TEの挿入によって遺伝子の発現量や局在が変化することで新たな生理機能の獲得につながった例が報告されており、TEが「新たなゲノム進化リソース」となりうることが示されてきた。興味深いことに、SINEは単独では複製できず、LINEの複製酵素に依存して増殖するため、SINEはLINEの複製機構をハイジャックするために配列を変化させてきたのに対して、LINEはSINEのハイジャックから逃れるために配列を進化させてきたと考えられている。申請者は、SINEが1つもタンパク質をコードしない点に着目し、「TE間の軍拡競争を支える分子メカニズムはRNA二次構造の多様化にある」という仮説を立てた。
昨年度に引き続き、SINE・LINE間で共進化しているRNA二次構造を同定するために、(1)共進化関係にあるLINE・SINEのペアリング、(2)SINE・LINE間で保存されているRNA二次構造の探索を試みた。特に本年度は、ハイスループットにRNA二次構造情報を取得可能なicSHAPE-seqデータの解析により、SINEとLINEの間で共進化しているRNA二次構造の探索を実施した。その結果、各SINE・LINE系統ごとにRNA二次構造の多様化が起こってきたことを見出したが、こうした構造変化がTE間の共進化にどのような影響を及ぼすか、さらには生物進化においてRNA二次構造の多様化が新たな生理機能の獲得にどのように寄与してきたかについては、さらなる検証が必要である。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

SINE・LINE間で共進化しているRNA二次構造を同定するため、(1)共進化関係にあるLINE・SINEのペアリング、(2)SINE・LINE間で類似しているRNA二次構造の探索を試みた。昨年度は、in silico解析によりRNA二次構造を予測し、SINEとLINEの間での二次構造の類似性を比較することで、有意に保存されているRNA二次構造を探索したが、これらTE間において高度に保存されたRNA二次構造は同定されなかった。そこで計画を修正し、ハイスループットに構造情報を取得可能なSHAPE-seqデータ解析を実施し、各SINE・LINE系統ごとにRNA二次構造の多様化が起こってきたことを見出した。今後は、こうした構造変化がTE間の共進化にどのような影響を及ぼすか、さらには生物進化においてRNA二次構造の多様化が新たな生理機能の獲得にどのように寄与してきたかについて検証を進める予定である。
また本研究と並列して、以前発表した研究(Kawasaki et al., mBio, 2021)に関連する課題に着手している。申請者は哺乳類・鳥類に感染するRNAウイルスを大規模に同定した実績を持つが、同定されたウイルスの感染性や病原性といった性質は未解明のままとなっている。そこで申請者は、ウイルスの遺伝子配列情報のみからヒトへの感染リスクを評価する機械学習モデルの開発に取り組んだ。その結果、本モデルは多様なウイルス科において既存手法よりも高い予測性能を示した。その一方で、いずれのモデルでも予測が困難なウイルス系統が存在するという未解決課題も見出し、今後の機械学習モデルの発展に寄与する知見を得ている。これらの成果は国際誌に投稿予定である。

Strategy for Future Research Activity

本年度は、SINE・LINE間で共進化しているRNA二次構造を同定するため、(1)共進化関係にあるLINE・SINEのペアリング、(2)SINE・LINE間で類似しているRNA二次構造の探索に取り組んだ。しかし(2)において、SINE・LINEの配列クオリティの問題により、in silico解析ではこれらTE間で高度に保存されているRNA二次構造を同定することが難しいという課題に直面した。そのため計画を修正し、ハイスループットに構造情報を取得可能なicSHAPE-seqデータを解析し、SINE・LINEにおけるRNA二次構造の決定に取り組んだ。その結果、各SINE・LINE系統ごとにRNA二次構造の多様化が起こってきたことを見出したが、こうした構造変化がTE間の共進化にどのような影響を及ぼすか、さらには生物進化においてRNA二次構造の多様化が新たな生理機能の獲得にどのように寄与してきたかについては、さらなる検証が必要である。今後は、SINE・LINEにおいて共進化してきたと考えられるRNA二次構造が、これらTEの複製プロセスに与える影響をウェット実験により検証する。具体的には、野生型SINEおよびRNA二次構造を破壊したSINE変異体の挿入活性を、LINEを発現させた培養細胞において測定・比較する。野生型SINEと比較して、変異体の挿入活性が有意に減弱した場合、該当のRNA二次構造はSINEがLINEの複製機構をハイジャックする上で重要な機能を担っていると考えられる。また並行して、SINE・LINE間で共進化してきたRNA二次構造がどのような転写産物の発現制御に関わっているかを明らかにするため、公共データを用いたオミクス解析を実施する予定である。

Causes of Carryover

特別研究員奨励費(雇用PD分)学術条件整備の次年度使用分

  • Research Products

    (9 results)

All 2024 2023

All Journal Article (3 results) Presentation (5 results) (of which Invited: 3 results) Book (1 results)

  • [Journal Article] Multiple recombination events between endogenous retroviral elements and feline leukemia virus2024

    • Author(s)
      Ngo Minh Ha、AbuEed Loai、Kawasaki Junna、Oishi Naoki、Pramono Didik、Kimura Tohru、Sakurai Masashi、Watanabe Kenji、Mizukami Yoichi、Ochi Haruyo、Anai Yukari、Odahara Yuka、Umehara Daigo、Kawamura Maki、Watanabe Shinya、Miyake Ariko、Nishigaki Kazuo
    • Journal Title

      Journal of Virology

      Volume: 98 Pages: -

    • DOI

      10.1128/jvi.01400-23

  • [Journal Article] FeLIX is a restriction factor for mammalian retrovirus infection2024

    • Author(s)
      Pramono Didik、Takeuchi Dai、Katsuki Masato、AbuEed Loai、Abdillah Dimas、Kimura Tohru、Kawasaki Junna、Miyake Ariko、Nishigaki Kazuo
    • Journal Title

      Journal of Virology

      Volume: 98 Pages: -

    • DOI

      10.1128/jvi.01771-23

  • [Journal Article] COVID-19パンデミック下におけるウイルスゲノム疫学の発展2023

    • Author(s)
      川崎 純菜、伊東 潤平
    • Journal Title

      JSBi Bioinformatics Review

      Volume: 4 Pages: 10~25

    • DOI

      10.11234/jsbibr.2023.primer2

  • [Presentation] 公共データの再利用によるネクストパンデミック監視システムの構築に向けて2023

    • Author(s)
      川崎純菜
    • Organizer
      NGS EXPO 2023
    • Invited
  • [Presentation] ウイルス遺伝子配列情報からヒト感染リスクを評価する深層学習モデルの構築2023

    • Author(s)
      川崎純菜、浜田道昭
    • Organizer
      第70回日本ウイルス学会学術集会
  • [Presentation] ウイルス感染症の制圧はなぜ難しいか?2023

    • Author(s)
      川崎純菜、伊東潤平
    • Organizer
      2023年日本バイオインフォマティクス学会年会・第12回生命医薬情報学連合大会
    • Invited
  • [Presentation] Assessment of viral infectivity to humans using nucleotide language models2023

    • Author(s)
      川崎純菜、浜田道昭
    • Organizer
      2023年日本バイオインフォマティクス学会年会・第12回生命医薬情報学連合大会
  • [Presentation] ウイルス遺伝子配列からヒト感染リスクを評価する深層学習モデルの構築2023

    • Author(s)
      川崎純菜、浜田道昭
    • Organizer
      2023年度生物工学若手研究者の集い 夏のセミナー
    • Invited
  • [Book] 実験医学2023年9月号2023

    • Author(s)
      石野 史敏、川崎 純菜、小嶋 将平、小林(石原) 美栄
    • Total Pages
      131
    • Publisher
      羊土社
    • ISBN
      978-4-7581-2571-0

URL: 

Published: 2024-12-25  

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