2022 Fiscal Year Annual Research Report
超新星爆発内部で自己相互作用が引き起こすニュートリノ集団振動の影響の研究
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22J00440
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
財前 真理 早稲田大学, 理工学術院, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2025-03-31
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Keywords | ニュートリノ振動 / 超新星爆発 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、ニュートリノ同士の相互作用によって引き起こされるニュートリノ集団振動の振る舞いを解明することである。この現象は大量にニュートリノが放出される超新星爆発や中性子星合体において卓越すると考えられており、フレーバーに依存する反応を通してそのダイナミクスに影響を与える。特にそうした天体現象において主要な振動モードであると考えられている、ニュートリノの角度分布が原因で生じる高速フレーバー変換と呼ばれる現象にここでは注目する。そのニュートリノのフレーバーが入れ替わる振動スケールは恒星進化のスケールと比べると非常に短く、大スケールな星の進化計算に組み込んで同時に計算することは実質的に不可能となっている。そこでまずは星計算とは独立にニュートリノ集団振動の非線形計算を行い、その漸近的な振る舞いを理解することを目指す。 初年度は空間1次元を仮定した場合の時間進化計算を行い、最終的に系全体が辿り着く準定常状態に注目した。その結果、元の支配方程式から得られるフレーバー変換の安定性とニュートリノのレプトン数に関わる保存量に従ってその準定常状態が決められることが判明し、その2つの要素から解析的に準定常状態の概形を与えることに成功した。これは非線形計算をせずともニュートリノ集団振動によるフレーバーの終状態を得られることを意味しており、この事実は恒星進化計算に高速フレーバー変換の効果を組み込み易くなることに繋がる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目標は、ニュートリノ集団振動の効果をより大きなスケールな星計算に組み込むために、その漸近的な振る舞いを理解することである。この初年度では、空間1次元の場合限定ではあるが、実際の数値計算から得られる準定常状態を解析的に理解することに成功した。この成果をまとめた論文は査読中のものも含めて複数本発表してある。 今後これを足掛かりに一般化していくことを踏まえると、順調に進んでいると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度に得られた結果からより一般的な場合を想定して、これまでに考慮してこなかった別の項がどのようにニュートリノ集団振動の振る舞いに影響を与えるかを理解することを目指す。具体的には、これまで行ってきた計算ではニュートリノの角度分布にのみ注目し、エネルギー分布や背景物質からの散乱効果については無視していた。これらの影響を含めると高速フレーバー変換の準定常状態がずれるはずであるため、それを踏まえた上での解析的なモデルの構築を目指す。2年目以降は既存のシミュレーションコードをより一般的なものへと拡張し、それを用いて数値計算と解析解の探索を進めることとする。
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