2022 Fiscal Year Annual Research Report
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22J11254
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Waseda University |
Research Fellow |
御手洗 靖大 早稲田大学, 文学学術院, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2024-03-31
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Keywords | 拾遺和歌集 / 拾遺抄 / 菅原道真 / 河原院 / 古典教育 / 和歌の指導 |
Outline of Annual Research Achievements |
※現時点での経過 『拾遺抄』と『拾遺和歌集』に見える菅原道真詠の問題に取り組み、論考を執筆した。この論考は査読誌『文学研究科紀要(第 68 輯)』(2023年3月)への掲載がなされた。菅原道真詠「こちふかばにほひおこせよ梅の花あるじなしとて春をわするな」をとりあげ、その表現「こちふかば」、「にほひおこせよ」を表現史的に位置づけようとしたものである。本稿によって、当該道真詠が10世紀後半の河原院文化圏と関わる可能性が指摘できた。今後の研究方針としては、河原院文化圏と道真、そして『拾遺抄』撰者との関わりの解明が課題となる。これにより、三代集における道真詠の研究から、『拾遺抄』『拾遺和歌集』の研究へと移行した。現段階では、受領中心の河原院文化圏の歌人と、貴顕たる藤原公任との結びつきを明らかにすることを目標として研究を進めている。 また、その他の業績として、王朝和歌の知見を国語教育にいかした教育実践報告を成稿し、都内私立高等学校の研究紀要(『麻布中学・高等学校紀要 第11号』2023年3月)に掲載された。 ※現時点での業績、主な論文発表、獲得研究費 ・科研費 「『拾遺抄』・『拾遺和歌集』の研究」(日本学術振興会 科学研究費助成事業 特別研究員奨励費 2022年4月 - 2024年3月) ・論文 「菅原道真「東風吹かば」詠への表現史」『文学研究科紀要(第 68 輯)』(2023年3月)「教室で和歌を読む 詠む」『麻布中学・高等学校紀要 第11号』(2023年3月)
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
10世紀末における道真と和歌の研究は、学振申請時点から採用までの間に完了する予定であったが、本年度の成果である「菅原道真「東風吹かば」詠への表現史」(『文学研究科紀要(第 68 輯)』2023年3月)これまでの道真詠研究が、今後の『拾遺抄』、『拾遺和歌集』研究へ展開する重要な論となると判断し、本年度は『拾遺抄』所収(『拾遺和歌集』も同断)道真詠の表現を享受の観点から調査することとなった。成稿した論としては、以上のみであるが、本年度は、未だ学会に浸透しているとはいえない『拾遺抄』の最古写本の存在や、『拾遺抄』成立の問題と円融院の存在が明らかとなった。次年度では、これらの調査、考察を行い、成果としての成稿化を進めていきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、河原院文化圏の調査と並行して、『拾遺抄』成立の問題も調査している。『拾遺抄』の成立に円融院の撰集事業があったのではないかとの仮説のもと、進めていく。これまで円融院の撰集事業は藤原氏との関係の悪化から挫折したものと考えられてきたが、近年、日本史の分野で円融院の位置づけが異なってきた。報告者はこれをふまえて、新たに円融天皇の和歌事跡を捉え直し、これまで不明とされてきた拾遺抄の成立の背景に円融がいたのではないかということを考えたい。
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